2019年06月18日
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ソートリーダーシップ・マーケティングとは?

 

あなたのビジネスの「Thought」は何?

最近、よく耳にするようになったソートリーダーシップ・マーケティング。具体的にどのようなマーケティング手法を指すのでしょうか?

そもそも「ソート リーダーシップ(Thought Leadership)」とは、ある特定の分野で周囲に一目置かれるような第一人者であること。個人だけではなく、企業も独自の理念や主義(=Thought)を掲げ、社会や消費者から共感を呼ぶことができれば、その課題解決の第一人者たるソートリーダーのポジションを獲得することができます。

たとえば時計ブランドのSWATCHは、時計の機能をシンプルにして価格を抑え、同時に高いデザイン性を加えて、時計をファッションの一部として提案することで、それまで「価格が高いほうが、価値が高い」とされてきた時計業界に新しい価値観を生み出し、ソートリーダーとしての地位を確立したことで知られています。

また、Googleは「Googleの使命は世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにすることです」と定義した上で、社の理念の1つに「ユーザに焦点を絞れば、他のものはみな後からついてくる」を掲げ、ユーザ第一主義を貫きました。その姿勢が多くのユーザの共感や信頼を呼び、今では「検索と言えばGoogle」という確固たるポジションを獲得しています。

つまり、「Thought」を上手くマーケティングに活用することができれば、多くの消費者やユーザの共感を呼び、ビジネスの成長にも繋げられるということです。当然、ソートリーダーシップ・マーケティングに投資する企業も増えており、2017年にLinked InとEdelman Digitalが共同で行った調査によると、経営幹部の80%以上が強力なソート リーダーシップは「ブランドの信頼向上に貢献した」と述べ、51.5%が「潜在的な代理店パートナーを探す上で重要な要素となる」と述べたことが明らかになりました。

なぜ「Thought」は重視されるのか?

このようにソートリーダーシップがビジネスにおいて重視されるようになったのは、企業に社会的責任(CSR)が求められるようになり、社会課題の解決に努力することが求められるようになったからです。

このことについてコトラーは、企業に求められるマーケティングが、製品中心のマーケティング1.0(機能価値)から、消費者中心のマーケティング2.0(機能価値+情緒価値)へ、そして価値主導のマーケティング3.0(機能価値+情緒価値+社会価値)へと大きく進化しているとし、マーケティング3.0においては単に顧客を満足させるだけでなく、「社会をより良くする、世界をより良い場所にする」という姿勢が問われるようになることを指摘しています。

単にモノやサービスを売るためのマーケティングではなく、何か社会的な活動をしているかどうか、そして、その活動を企業の「Thought」(=想い)と紐づけてアピールできるか否かで、消費者やユーザのブランドに対するイメージ(ブランドイメージ)や評価が変わってくるということです。

的外れの「Thought」はマイナス効果に

とはいえ、ソートリーダーシップ・マーケティングで成功を収めるのは、決して容易なことではありません。消費者の心に響かず、共感を得られない場合は大きな損失になりますし、「ソートリーダーシップ・マーケティング」であることが見透かされてしまうと、むしろブランドイメージが下がったりネット上で炎上してしまったりするリスクすら考えられます。

では、どうすればソートリーダーシップ・マーケティングを成功させることができるのでしょうか?成功事例として知られる、アメリカの老舗ジーンズフランド「リーバイス」の例を見てみましょう。

リーバイスが2019年3月にニューヨーク証券取引所に再上場を果たした際、同社のチップ・バーグCEOが自身のジーンズを「10年間、洗っていない」と発言し、大きな話題を呼びました。このバーグ氏の発言について、ネット上では「話題作りの発言」と勘違いする声も聞かれましたが、事実はそうではありません。実は、この発言の真意は、話題作りでも自社製品のPRでもなく、同社が行っている「水資源保護活動※」の一環だったのです。

※同社では最近、ジーンズの製造業界初のWater Recycling and Reuse Standard(水のリサイクル・再利用の規格)を設け、真水3千万リットルの節約に成功しています。

つまり、バーグ氏は自身がジーンズを10年間洗っていないこと、それでも何の問題もないことを発言することによって、「ジーンズの洗濯回数を減らせば、世界中で深刻化しつつある水資源保護につながる」ことを、多くの人に伝えることに成功したのです。しかも、バーグ氏もリーバイス社も、消費者に対して「洗濯をするな」「水を大切にしなさい」といった押し付けがましい発言やキャンペーンは一切行っていません。

バーグ氏の一連の言動は、リーバイス社の考え方や理念、人々の関心を促す、素晴らしい方法でした。同社は今後、ジーンズ界のリーダーであるだけでなく、アパレル業界の水資源保護の取り組みにおいても、ソートリーダーとして一目置かれる存在へとなっていくことでしょう。

リーバイスのように、自社の価値観を確立し、それをしっかりと消費者に伝えること。そして、商品を売り込むのではなく、自らが知り得た事実を共有し、消費者に気づきや発見、感動を与えることを目指して、無私無欲な姿勢で臨むこと。

このあたりに、ソートリーダーシップ・マーケティング成功の秘けつが隠れているといえるのではないでしょうか。