データ・サイエンティストに求められる役割とは?

ビッグデータ活用のニーズが高まる中、日本でも企業等に蓄積された膨大なデータを収集・分析・活用法を見出すデータサイエンスの専門家「データ・サイエンティスト」の育成にむけた取り組みが本格化しています。

2018年には京都大学や大阪大学などの8大学が「データ関連人材育成事業」を行う共同事業体を立ち上げ、データ・サイエンティスト育成に特化したカリキュラムをスタート。また、同じく2018年には、産学連携でデータ・サイエンティストの育成に取り組む一般社団法人サーキュラーエコノミー推進機構(東京・渋谷)が設立され、2019年5月には、同機構の研修を優秀な成績で修了した19名に、初めての認定証が授与されました。

データ・サイエンティストとは?

そもそも、データ・サイエンティストにはどのような役割が求められているのでしょうか?

実際にデータ・サイエンティストとして活躍している人の多くが、もともと統計やプログラミング関連の部署でキャリアをスタートさせていることから、データ・サイエンティストには、統計解析やITのスキルのみが求められると思われがちですが、決してそうではありません。

データ・サイエンティストに求められる役割は、単にデータを収集・分析するだけでなく、さまざまな意思決定の局面において、データ解析に基づいた合理的かつ総合的な判断を行えるように意思決定者(企業経営者など)をサポートすること。つまり、データ・サイエンティストには、統計解析やITのスキルに加えて、ビジネスやマーケティングなどの幅広い知識も求められるのです。

もちろん、所属している企業や団体によって、具体的な職務内容は異なりますが、データ・サイエンティストに求められる基本的なスキルには以下のようなものがあります。

  • 大量のデータを収集し、より利用しやすいフォーマットへ変換する
  • ビジネス課題をデータ主導型の手法を用いて解決する
  • SAS、R、Pythonなど幅広いプログラミング言語による作業を行う
  • 統計情報を的確に理解する
  • 分析手法に関する最新動向(機械学習、ディープ・ラーニング、テキスト・アナリティクスなど)を把握する
  • IT部門および業務部門とコミュニケーションを取り、必要に応じてコラボレーションを実現する
  • データに潜む秩序やパターンを発見し、ビジネスの最終利益に寄与する方法を特定する

自らデータ・サイエンティスト育成に踏み切る企業も

大手企業の多くで、データ活用が本格化する中、データ・サイエンティストへの需要はますます高まっており、一部では「今、最も稼げる職業」とも言われています。しかし、必要なスキル等の習得に時間がかかることから、データ・サイエンティストの数は世界的に不足しているのが現状です。日本でも、経済産業省の推計によると、2018年の段階で、国内におけるビッグデータ、IoT、AIを担う人財の不足数は約3万人ですが、2020年には約4.8万人に拡大するとみられています。このような状況下で、データ・サイエンティストを採用することは決して容易ではありません。そこで、データ・サイエンティスト育成の取り組みを始める企業も現れています。

例えば株式会社日立製作所では、2018年にデータ・サイエンティストの育成プログラムを整備するとともに、トップクラスの研究者や各分野の実務者が相互に研さん・支援し合う「プロフェッショナル・コミュニティ」を立ち上げ、日立グループ内におけるデータ・サイエンティストを、現在の700名から2021年度までに3,000名に増やすことを目標に掲げています。

あらゆる業界でデータ活用の重要度がますます高まる中、このままデータ・サイエンティストの不足が続けば、データ・サイエンティストの争奪戦が起きると指摘する声もあります。いかに優秀なデータ・サイエンティストを獲得するか、育成するかが、企業やブランドの成長のカギを握るといっても過言ではないかもしれません。