広がるD2C、大手サイトを介さずに直接消費者にリーチ!

質の高い商品を直接消費者に

Amazonや楽天といった大手のオンライン通販サイトを介さずに、消費者に直接リーチする「ダイレクト・トゥ・コンシューマー」(以下、D2C)とも言われる商流が日本でも勢いを増しつつあります。キリンビールや資生堂の取り組みを例に、その背景を探ってみましょう。

大手通販サイトを敢えて介さないD2Cの商流を生んだのは、アメリカのスタートアップ企業。通販サイトを挟まないことで中間コストを省き、高品質な商品を低価格で提供するビジネスモデルが評価され、化粧品の「グロッシアー」や電動歯ブラシのQuip、アイウェアのWarby Parkerなど、D2C戦略で成功を治める企業が次々に登場しました。

最近では日本でもビール大手のキリンビールがD2C戦略を採用、消費者に工場から直接できたてのビールを届ける「キリンホームタップ」というサービスを開始しました。サービスのコンセプトは「Tank to Glass」。会員になって毎月7,500円を支払うと、月に2回、新鮮な樽詰ビール2本(1本1リットル入り)が自宅に届く仕組み。届けられるビールはいずれも市販されていない限定品、しかも会員になるとレンタルされる専用サーバーでビール本来のクリーミーな泡も楽しめるとあって、人気が急上昇。市販のビールには満足できない消費者や、自宅でビールを飲む習慣がなかった消費者の支持も獲得し、一時は受付を中断せざるを得ないほど、申込みが殺到しました(2019年10月現在「プレ登録」後、順番待ちの状態)。

また、化粧品大手の資生堂もD2C戦略に舵を切った企業の1つです。2019年7月、自分の肌の状態に合わせて自宅で化粧液を調合できる直送サービス「オプチューン」(月額1万円)を開始し、話題を呼んでいます。消費者が専用アプリで自分の肌を撮影すると水分量や皮脂量が測定され、肌の状態に合わせて選ばれた5種類の化粧液の素が入った専用マシンが届く仕組み。化粧液の素の組み合わせパターンは8万通りもあり、自分の肌状態に最適な化粧品を使いたいという消費者のニーズにきめ細やかに対応することが可能に。化粧液の素は前回注文分が切れるタイミングで自動的に配送されるため、買い足しの手間暇も不要です。市販の化粧品に満足できない消費者層の支持を得て、利用者数を伸ばしつつあります。

多様化する消費者の声に応えるための切り札に

D2Cの台頭の背景にあるのは、企業側の「通販サイトを介してしまうと、消費者の声が拾いにくい」という不満です。大手サイトを利用すれば、集客や物流の手間暇やコストは省けるものの、企業は消費者との直接の接点を失ってしまうため、消費者が商品にどんな感想を持ったのか、どんな潜在的なニーズがあるのか把握しづらくなってしまいます。また、企業やブランドのファンを増やし、顧客ロイヤルティの醸成を図るためにも、通販サイトを介さずに消費者と直接繋がりたいという企業も増えているのです。当然、D2Cにすれば、通販サイトを利用するのにかかるコスト(=販売手数料、Amazonの場合は8~15%)がかからないので、浮いたコストを有効活用できるメリットも大きいと言えるでしょう。

最近では自社のD2Cサイトでコアな顧客層に特別な商品やサービスを提供しつつ、集客力のある通販サイトでは格安商品を販売する・・・、という具合に、通販サイトとD2Cを使い分ける企業も増えています。

こういった動きを受けて、大手通販サイト各社は警戒感を強めており、物流の効率化や顧客企業へのサービス体制を強化する動きも出ています。たとえば、Amazonでは海外進出を図りたい顧客企業を対象に、Amazonの倉庫に商品を預けるだけで海外に商品を販売でき、通関手続きや販売金回収などもAmazonに代行してもらえるサービスを開始しています。

大手が独占しつつあるかに見えたEC市場に、D2Cサイトの台頭がどのように変化を巻き起こしていくのか、サービスはどのように多様化していくのか、これからも目が離せそうにありません。