米国のToys“R”Us閉店から小売業者が学ぶべき「3つの消費者行動」

更新日 2020年07月30日

2017年、玩具の小売大手・米Toys”R”Usが破産法申請を行い、経営破綻しました。同社が世界中で展開していた700以上もの店舗は閉店を余儀なくされ、多くの買い物客が、これまで慣れ親しんできた店舗を利用できなくなりました。

小売業界には今、大きな変化の波が押し寄せています。Toys”R”Usの破綻の要因を1つに絞ることはできませんが、アナリストらはコスト削減や競合企業の動向、またイノベーションへの対応不足などを指摘しています。こうした要素については、多分に議論の余地があるかもしれません。しかし、トイザらスの経営破綻によって小売市場にぽっかりと開いた「穴」については、これまで、あまり取り上げられることがありませんでした。

Toys”R”Usは過去数十年にわたって、玩具小売大手として高いロイヤルティを持つ従業員や顧客を獲得してきました。しかし、Toys”R”Usが経営破綻したからといって、従来あった玩具への需要が突然なくなるわけではありません。Criteoは、これほど大きな影響力を持つ小売企業が市場から消え去った時、いったい何が起きるのかについて知りたいと考えました。消費者はこの状況にどのように適応し、他の小売業者にはどのようなチャンスが生まれるのでしょうか。

それを探るために、CriteoはかつてToys”R”Usを利用していた1,000人以上の顧客を対象にアンケート調査「Toys”R”Us Shopper Survey(Toys”R”Usのユーザを対象にしたアンケート)」を実施し、主に「Toys”R”Usの閉店に、どう対処したのか」「Toys”R”Usの代わりに、今はどこで玩具を購入しているのか」等について質問しました。

この調査からは、消費者の購入意図をはじめ、ブランドの実店舗が持つ影響力に関するインサイトなど、消費者行動と小売業界の現状について、次の5つの教訓が得られました。

1. 利便性と価格が最優先に

極めてマクロなレベルで見た場合、大部分の買い物客にとって、Toys”R”Usに代わる購入先を探す上での最優先のポイントは、「利便性」「価格」であることが明らかになりました。

小売業界全体の近年の傾向としては、価格は必ずしも消費者が購入の意思決定をする際の最大の要因ではないという考え方が一般的です。そして、価格に匹敵するレベルで最近の消費者の重視するのが、日常生活の中における利便性なのです。

具体的には、購入のしやすさ、シームレスなショッピング体験などに消費者は高い価値を見いだしており、Toys”R”Usの顧客だった人々にとっても、市場における最低価格を求めるニーズは、わずかの差ではあるものの2位という結果になっています。

当然、小売大手の中にはToys”R”Usが捉え損ねたチャンスを、大いに活かせる企業もあります。

小売業者は、実店舗とオンライン店舗の選択肢を組み合わせれば強力な誘引力を生み出すことができ、利便性を求める買い物客から多くのメリットを享受できるはずです。また、価格とオンライン上での体験の両方で競争力を高めるために、小売大手のブランドはオムニチャネル体験全体で消費者の期待に応えることにフォーカスしていかなければなりません。

2. 買い物客は、今も実店舗での体験を重視している  

最近の消費者は実店舗にでかけなくなっていると言われる中、Toys”R”Usは、その利便性で他店舗から抜きん出ていました。今回、調査の対象者に今後のショッピングについて尋ねたところ、約3分の2の65%が実店舗での購入が増える、および/またはオンラインも実店舗も同じ程度利用すると回答しています。

これにはロケーションが関係しています。買い物客の3人に2人が、Toys”R”UsまたはBabies”R”Usの店舗から20分以内の圏内に住んでいたのです。同様の利便性を提供している他の代表的な小売大手にはWalmartやTargetなどがあり、「ロケーションを重視する」とした回答者全体の傾向としても、WalmartやTargetなどの小売大手を好んで利用しているようです。

3. 実店舗での体験が顧客ロイヤルティの向上に直結する

ロイヤルティの高いToys”R”UsやBabies”R”Usの顧客が、実店舗でのショッピングを重視していたことは明らかです。彼らは購入前に実際に商品を見たり触れたりし、またToys”R”Usの月刊誌の購読や店舗全体のレイアウト、そこでの体験を重視していました。

立地や自宅からの距離は、客足の多さや購入につながる重要な要素ではあるものの、実はそれよりも「実店舗でのショッピング体験」を重視する消費者が多いこともわかりました。つまり、Toys”R”Usの顧客ベースの場合、消費者のロイヤルティは実店舗でのインタラクションによって醸成されてきたということです。

Toys”R”Usでのショッピングで最も良かった点を尋ねたところ、回答者の大多数が「品揃え」を挙げており、「実店舗でのショッピング体験が優れていた」と回答しています。実際、アンケート回答者の32%が過去12カ月間に実店舗を利用しており、これはオンラインと比較して3~4倍も多く購入していた事実を裏付けています。

顧客理解を通じて、チャンスを確実に捉える

利便性、実店舗の影響力、実店舗での体験は、どれもブランドと顧客間の関係構築に重要な役割を果たします。小売大手は、Toys”R”Usが消費者のロイヤルティを醸成してきた要素から、非常に重要な教訓を学ぶことができます。

絶えず変化し続ける小売市場の未来の動向を予測するために、マーケターは過去の先駆者たちに目を向け、そこから学びを得なくてはなりません。

今回のアンケート調査の本文や、そこから得られたインサイトなどについてさらに詳しく知りたい方は、Criteoの調査レポート「Retail Disruption & Opportunity: The Toys”R”Us Shopper Survey(小売業界の創造的破壊と機会:Toys”R”Usのユーザを対象にしたアンケート)」をぜひお読みください。