増税直前!駆け込み消費の影響は?

増税前の駆け込み消費、ピークはこれから?

10月1日の消費増税まで、残り1か月を切りました。前回の増税時(2014年4月)に比べると、駆け込み消費がいまいち盛り上がらないという声も聞かれますが、前回も日用品などのいわゆる「買いだめ」のピークは、実は増税2週間前頃、つまり直前だったと言われています。

今回は外食や酒以外の食品は税率が8%に据え置かれること、10月1日から2020年6月30日までの9か月間限定で、クレジットカード払いやQRコード支払いなどのキャッシュレス決済時に限り、ポイントが還元されるキャンペーン(中小個人商店は5%、フランチャイズのコンビニは2%)が政府主導で実施されることなどから、「食品や日常品の買いだめの必要はないのでは」と言う人もいます。とはいえ、やはり直前になると、増税前に買っておこうと思うのが人情というもの。ここにきて、一部の商品に駆け込み消費の兆しが出てきているようです。

日本経済新聞によると、イオン参加のディスカウント店ビッグ・エーでは8月に、洗剤・仕上げ材の売上が前年同月比で18%、トイレットペーパーが8%、電球が7%の増加。実際、調査会社マクロミルが「9月までに買いだめする消費財」について1000人に聞いた調査では、最も多かった「ティッシュペーパー」(24%)ついで「シャンプー・リンス」(21%)、「洗濯用洗剤」(19%)、「歯磨き、歯ブラシ」(16%)と日用品が上位に。軽減定率の対象外となった日用品、酒の買いだめは9月いっぱい続くものと見られます。その一方で、一部日用品のほか化粧品など、中小個人商店やフランチャイズのコンビニでも買えるものについては「むしろ、増税前に買い控えが起き、10月以降に反動増が起きる」という見方をする専門家もいます。

自動車は低調、家電は・・・?

一方、前回の増税前に比べ明らかに盛り上がりに欠けるのが、自動車です。前回の増税時には新車販売台数が増税前の13年9月~14年3月まで7カ月連続で前年同月比10%超伸びたのに対し、今年7月の国内新車販売台数(軽自動車含む)は前年同月比4%にとどまっており、今のところ、大規模な駆け込み需要は起きていないようです。その背景にあるのが、政府による需要の平準化政策です。政府では増税前後で販売の急変動を避けるため、10月以降、自動車税の引き下げ(最大4,500円)、購入時の税金軽減などの平準化策を実施。その影響もあって、増税前の新車購入に慎重になっているケースも多いとされています。

逆に好調な売れ行きを見せているのが、家電です。家電の場合は特に政府による平準化政策がなく、軽減税率の対象外でもあるので、増税前に買い替えておこうという動きが活発に。日本経済新聞によると特にテレビや洗濯機、スティック型掃除機など一部家電の中には前年比2桁増の売れ行きを見せているものもあるそうです。

さらに好調な売れ行きを見せているのが、秋冬用の衣料品。特に高額なダウンジャケットやコートなどを、シーズンイン前に発売開始する店舗も出ています。

軽減税率導入の混乱を防ぐには?

このように増税前の駆け込み消費の規模は、業界によってムラのあるまだら模様に。よって、その反動や影響が増税後にどの程度生じるのかについての判断が難しくなっています。政府は「特に目立った駆け込み消費はみられない」との判断を示しているのに対し、日銀は「規模は前回より限定的だが、一部で駆け込み消費が起きている」との見方を示しています。前回の増税後には消費の落ち込みが顕著に見られ、その対策として値下げを断行する企業が続出して、物価上昇率が鈍化、日銀は半年後に追加緩和実施に追い込まれた経緯があり、警戒を強めていると見られています。

さらに懸念されているのが、日本で初めての軽減税率導入による混乱です。同じ酒類でも「みりん」は税率10%、みりん風調味料は8%、同じ牛丼でも店内で食べれば10%で、持ち帰れば8%、同じ新聞でも定期購読は8%で、駅の売店で購入すれば10%・・・。これに加えてキャッシュレス決済によるポイント還元キャンペーンへの対応もあり、現場のオペレーションで混乱が生じるのは避けられないでしょう。この混乱が原因で、消費者の消費意欲が冷え込む可能性も指摘されています。

軽減税率導入にキャッシュレス決済のポイント還元と、初めてづくしの今回の消費増税。増税の影響がどこまで消費に影響を及ぼすかは未だ不透明で、今後の同行を慎重に見極める必要があります。ただし、増税後のキャンペーンの成否の鍵を握るのは「お得感」に加え、価格やポイント還元率の「わかりやすさ」であることは間違いなさそうです。