総務省の「モバイル決済モデル推進事業」とは?

2019年10月に予定されている消費増税。増税による景気への影響を抑えるため、政府ではさまざまな事業を推進しています。中でも、経産省主導の「キャッシュレス・消費者還元事業」はキャッシュレス決済をした消費者にポイントが還元されるとあって、大きな注目を集めました。しかし、お店側にクレジットカードやスマホ決済の受け入れ体制が整っていないと、消費者としてはキャッシュレス決済をしたくてもできませんよね?そもそも日本はキャッシュレス後進国。都市部や大手チェーンの店舗ではキャッシュレス決済に対応しているところが多いですが、地方の商店街や個人経営の店舗ではクレジットカードすら使えないことが珍しくありません。その理由としては、導入コストと手数料の高さがネックになり、キャッシュレス決済導入に二の足を踏む事業者が多いことが指摘されています。

キーワードは「地方」~長野など4県で実証実験がスタート

そんなジレンマを解消すべく、総務省が打ち出した事業が「モバイル決済モデル推進事業」です。この事業は、「モバイル端末を用いたキャッシュレス決済手段の、小規模店舗を含めた広範な普及を図るため、QRコード決済の仕様及び業務の標準化と、安価な手数料での提供について検証する実証等を行う」というもので、去る3月22日には、実証実験を行う地域として、岩手県・長野県・和歌山県・福岡県の4県が公募で選ばれました。4県では、2019年8月から2020年1月までモバイル決済推進の実証実験が行われます。

選ばれた地域を見るとわかるとおり、今回の実証実験のポイントの1つは「キャッシュレス化の地方への拡大」。キャッシュレス化が遅れている地方で、本実証実験への参加者(小売店舗など)を募り、キャッシュレス化決済が行える店舗を増やすのが第1の目的です。例えば長野県では4000~6000の事業者の参加を募り、キャッシュレス化を推進して行く予定です。出典:総務省資料「モバイル決済モデル推進事業について」

「ペイペイ」や「LINEペイ」などが、統一QRJPQR」に対応

そしてこの実証実験のもう1つのポイントがQRコードの統一化です。日本では決済会社ごとに個別のQRコードを使用しているため、店舗側は決済会社の数だけQRコードを印刷した紙やボードをいくつも置かなければならず、現場で混乱する可能性が高い状況でした。そこで、本実証実験では日本で初めての統一QRコード「JPQR」を導入し、お店側はこのQRコード1つを準備しておけば、複数の決済会社に対応できることになりました。

同時に、本実証実験では店舗側がタブレット端末に金額とQRコードを表示させ、それを客のスマホに読み取らせる方式や、客のスマホにコードを表示させ、それを店舗側のタブレット端末で読み取る方式も対象にしており、実証実験に参加する事業者には、タブレット端末の貸与や既存の機器(POS等)のシステム改修費の補助なども予定されています。ちなみに、統一QRコードには、「ペイペイ」「LINEペイ」「オリガミ」などのスマホ決済が使用できることになる見込みです。

キャッシュレス決済は、消費者側の「便利さ」や「お得さ」だけが強調されがちですが、実は店舗側にもたくさんのメリットが。現金を扱わずに済むため防犯面でも安心ですし、レジ締めなどの事務作業にかかる手間暇も削減が可能。中には「レジ対応の時間が削減でき、その分、お客様へのサービスやコミュニケーションを充実させることができる」という声も聞かれます。さらにインバウンド関連の需要もあいまって、この実証実験を契機にこれまで普及が遅れていた地方でも一気に普及が進むことが期待されています。

店舗でキャッシュレス決済が進むことが、EC市場にどのような影響を及ぼすのか、どのようなメリットが期待できるのかはまだ未知数ですが、少なくともオンライン店舗と実店舗の両方を有する企業やブランドは、両者をつなぐキャンペーンを充実させる必要が出てくるでしょう。どのようなキャンペーンが有効かを見極めるためにも、今回の実証実験の経緯や成果をしっかり見届けたいものです。

総務省「モバイル決済モデル推進事業について」