2020年オリンピックイヤー、スポーツもAIの時代へ

更新日 2020年12月21日

オリンピックの見どころはスポーツのみにあらず

いよいよ2020年が始まりました。今年の日本で最大のトピックといえば、やはり夏に開催される東京オリンピックです。オリンピックはもちろんスポーツの祭典であり、各種目で世界トップレベルの技が披露され、選手たちがタイムや得点を競い合います。

しかし、この大舞台で披露されるのは、スポーツだけではありません。実はオリンピックは各時代の最新技術が駆使される、「技術の祭典」という一面も持っているのです。たとえば前回の東京オリンピック(1964年)では、世界で初めて衛星生中継が行われ、世界21カ国のテレビで開会式や各競技の様子が放送されました。

もちろん、今回の東京オリンピックでも最先端の技術が駆使されるはずですが、その中でも特に注目を集めているのが、AIによる体操競技の採点・審判です。近年、体操競技は器具の進化などにより、技の高度化・スピード化が進んでおり、審判の肉眼による目視が難しくなっていることが問題視されています。実際、採点・審判ミスが起こることも珍しくなく、

2012年のロンドンオリンピックの男子体操総合決勝では、日本の内村航平選手の採点の見直しが行われた結果、日本の最終順位が4位から2位に変更される・・・という異例の事態が起こりました。

こういったミスジャッジを防ぐために開発されたのが、富士通のAIによる採点支援システムです。すでに2019年10月にドイツで開催された世界体操選手権では男子鞍馬や吊り輪など4種目の採点・審判に活用され、話題を集めました。

この支援システムでは、まず選手の動きを3Dレーザーセンサーで測定、測定結果をもとにAIが360度のCGモデルを生成、審判は手元のモニターでこの画像を見ることにより、審判席にいながらにして選手の動きを360度から確認することが可能に。さらに、ひねりの回転数や体の角度を数値化して確認できるので、肉眼による目視での判定が難しい技についても、客観的かつ公平な採点を行うことができるようになります。

AIがメダルの色を変える可能性も!?

このAIによる採点支援システムは、東京オリンピックでも体操競技の採点・審判に活用される見込みで、将来的には体操以外の競技、特にこれまで目視による審判に頼っていたフィギュアスケートや水泳の飛び込みなどでの活用が期待されています。うまくいけば、東京オリンピックの次のオリンピック(2024年のパリオリンピック)では、全競技でAIによる採点・審判サポートが行われるかもしれません。

競技選手のレベルが高いがゆえに、わずか1点の差でメダルの色が変わってしまう可能性が大きいオリンピック。AIの有効性が広く認められれば、幅広い競技で採点・審判のあり方が大きく代わり、メダル争奪戦の構図にも大きな影響を及ぼすかもしれません。

なお、オリンピック以外でもAIによる審判を活用する動きは広がっています。たとえばアメリカでは、2019年7月、プロ野球史上初めて「ストライク」と「ボール」を判定するロボット審判が行われました。この試合で主審はiPhoneと接続したイヤホンを装着、投球を分析したコンピューターシステムによる判定結果を聞いて、「ストライク」または「ボール」をコールしました。このシステムが普及すれば、ストライクかボールかの判定で選手同士が殴り合いの乱闘に・・・なんていう事態に至ることは、将来なくなるかもしれません。

いずれにせよ、これからはスポーツの世界でもAIの活用が進むことは間違いありません。今年のオリンピックでは、このあたりにも注目して、各競技の観戦を楽しんでみてはいかがでしょうか?