「ニューノーマル」を形づくる10の消費者行動

更新日 2020年06月23日

最近よく耳にする「ニュウーノーマル(新たな日常)」とは、一体どのようなものでしょうか?消費者はこれからどのような新しい習慣や価値観に適応していかなければならないのでしょう? この世界レベルの大変革によって、市場にはどのような変化がもたらされるのでしょうか?

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響でソーシャル・ディスタンシングが新たなスタンダードとなった今、消費者は自らを新しい世界に順応させようとしています。こうした環境の中で、広告ビジネスにとって大きな成功要因の1つとなるのが、消費者行動の変化を先取りしながら長期的な戦略を策定し、深刻な打撃を受けた業界の回復を促進させることです。

Criteoの調査では、ここ数週間で食品、ホームオフィス用品家電製品、ペット用品など、幅広い製品カテゴリーで大幅な販売増加が確認されています。

本ブログでは、Criteoやその他の研究者たちが発見した最新の傾向やパターンを、各市場における潜在的な影響の分析とともにまとめています。

まず、「ニューノーマル」に見られる傾向について以下で見ていくことにします。

1.消費者はオンラインメディア(特に動画コンテンツ)の閲覧に多くの時間を費やしている。

動画コンテンツの消費は、COVID-19によるパンデミックの渦中に急激に拡大しましたが、その傾向はCOVID-19の終息後も継続すると思われます。

「メディア消費の増加が最も顕著なのはZ世代です。今回のパンデミック中、Z世代のオーディエンスのうち実に58%でソーシャルメディアの使用が増加しており、彼らのソーシャルメディアコンテンツの消費やエンゲージメントは、今もなお増加の一途を辿っています」とHill+Knowlton Strategiesのコンサルタント、ブリタニー・タム(Brittany Tam)氏は話しています。

消費者は自らを撮影し、これまで以上にInstagramやTikTokなどのSNSにそれらをアップロードするようになっています。これはブランドにとって、より自然な形で若い消費者にリーチできる貴重なチャンスです。なぜなら、一般消費者自らが商品の価値を伝える動画コンテンツを発信してくれる可能性があるからです。

画像:Robert Metz

2経済面での不安感から、価格に敏感になっている。

経済や資産に関する見通しが不透明なため、消費者の多くが、次のようなことを気にかけるようになっています。

  • キャンペーンや割引オファーなどのセール
  • 非生活必需品の消費の節約(ハイエンド/ラグジュアリー商品など)
  • 安価なブランド、ローカルブランド、プライベートブランド

McKinsey&Companyが2020年4月に行った調査では、世界の消費者の3分の2が「パンデミックの長期的な影響について不安を感じており、楽観視できない状況にある」と回答しています。景気回復に楽観的な人たちでさえも、今後数週間は支出に関して慎重な姿勢を示しています。

画像: McKinsey &Company

3.「獲得/成長」 よりも 「現状維持」を重視。

現在のように不安な状況の中で、「新しい製品・サービスを試してみたい」と考える人はそれほど多くありません。人々は、好きなものを探して次々と手に入れる「獲得」の生活から、「今ある資産や現状の維持」を重視する新たな生活へ移行しつつあります。

行動科学関連企業のInnovation BubbleのCEOを務めるサイモン・ムーア(Simon Moore)氏は、「今は新しい製品やサービスを展開する時期ではなく、既存のクライアントに対するサービスを改善するとともに、COVID-19がきっかけで御社の商品やサービスを使うようになった新規顧客の利便性を向上させるべき時期だ」と指摘しています。

画像: Sincerely Media

4. 消費者は困難な時期にニーズを満たしてくれるブランドを高く評価する。

Intelligence Centralが2020年4月に実施した調査では、消費者の58%が困難な時期に必要なサービスを提供するブランドに好感を抱き、また55%が「消費者を支援するための行動を起こしたブランドを高く評価する」という結果が出ています。個人だけでなくコミュニティへの支援をしたブランドも高く評価されており、消費者の58%が責任あるメッセージを発信したブランドを、54%が慈善活動をしたブランドを、そして50%がCOVID-19がもたらす不安に積極的に対処しているブランドを高く評価しています。

2020年には、多くのブランドがサステナビリティ(持続可能性)やコミュニティへの支援につながるコミュニケーションを行うようになっており、たとえば以下のようなテーマを取り上げています。

  • ブランドが収益に直結しない活動にまで配慮している目的意識や連帯感
  • ブランドが行っているコミュニティへの支援(消費者はブランドによるチャリティ活動を評価)
  • COVID-19による不安を和らげるためにブランドが実践していること
  • 意外なところで役に立つ商品・サービスの展開

これまで大胆なアプローチを重視していたブランドも、今はできるだけ人々の感情を逆なでしないように注意を払っています。消費者の日常生活をいかにサポートできるかを伝えるためには、適切なトーンによるアプローチが極めて重要です。同時に、多くの消費者がブランドはCOVID-19を商機として利用すべきではないとも考えています。

画像: Giorgio Trovato

5. ライドシェアリングにリスクを感じる人が増え、自動車業界は大きなチャンスを手にする。

移動規制解除後は、消費者の多くが自家用車や単独で利用できる移動手段(自動車、スクーター、バイクなど)を選ぶようになり、公共交通機関やライドシェアリングの利用頻度が低下すると予想されています。

IBMが2020年5月に実施した調査では、アメリカでは17%以上が、「COVID-19がきっかけで自家用車をより頻繁に利用するようになった」と回答し、ほぼ4人に1人が「自家用車を自分専用の移動手段にする」としています。なお、回答者のうち3分の1が、COVID-19終息後に車を購入するにあたっては「経済上の制約」が最も強く影響する、つまり価格を重視すると回答しています。

画像:Daniel Barreto国連による「世界のクリエイターへの呼びかけ」:COVID-19の拡大防止に向けた応募作品

6. 今後数カ月間は、多くの消費者が人混みを避ける。

同じくIBMの調査によると、「新たな日常」においてはカンファレンスや展示会の開催は大幅に減少すると見られています。実際、調査対象者の75%が、2020年にカンファレンスや展示会のようなイベントに参加する可能性は低いと回答しています。一方、バーやレストランなどは今後数カ月の間で一定の回復が見込まれています。IBMは調査レポートの中で、次のように説明しています

「3分の1以上の消費者がバーやレストランを訪問するだろうと回答し、訪問しないと回答したのはわずか10%にとどまっています。また、屋外の公園も人気のお出かけスポットの1つで、回答者の3分の1が、規制の解除後に屋外の公園を訪れる可能性が非常に高いと答えています。さらに、約25%の消費者がビーチにいくと回答、5人に1人がショッピングモール/センターでショッピングすると回答しています」

画像: @visuals

7. 消費者は「非接触型」の小売販売を求めている。

2020年は、スマホなどのモバイル端末上で瞬時に決済を行える「非接触型決済サービス」を提案するプレイヤーが、現金を触りたくないと考える買い物客から選ばれることになるでしょう。

IBMの調査でも、消費者の40%が「今後は非接触型の決済サービスを利用する可能性が高い」と回答しています。

画像:Nick van Wagenberg国連による「世界のクリエイターへの呼びかけ」:COVID-19の拡大防止に向けた応募作品

8. パンデミックを契機に、地元での買い物が優先する人が増えている。

買い物のために遠出をすることがなくなり、買い物客は店を選ぶ際に自宅からの近さ、扱っている商品の生産地や在庫状況を重視するようになっています。混雑を避けたい消費者が増えている中、従来のようなキャンペーンや大幅な割引セールを行うだけでは、実店舗に足を運んでもらうのは難しいでしょう。

IBMの調査では、米国の回答者の25%が「地元の店舗を利用し、さらに地元で生産/栽培/製造された商品をより頻繁に購入する」と回答しています。

画像:Tim Mossholder

9. 消費者は、より健康的なライフスタイルを志向するようになっている。

COVID-19をきっかけに、消費者はこれまでの自身の優先順位やライフスタイル、価値観などを見直し、健康管理の方法を改善しようとしています。

McKinsey & Companyは中国の消費者を対象に実施した調査の中で、次のように指摘しています。「自宅でのトレーニング (スポーツアパレルブランドなどがオンラインで提供)など、COVID-19による危機的状況下で生まれたものの中には、今後も人々から支持され続けるものがあるでしょう。これはCOVID-19の終息後も健康を維持したいという、多くの人々の意識を反映していると言えます」

画像:Nubefy Design for All.国連による「世界のクリエイターへの呼びかけ」:COVID-19の拡大防止に向けた応募作品

10. 新規ユーザーがEコマース成長の原動力になる。

同じくMcKinsey & Companyは、感染拡大後の中国の状況から得た教訓として、「これからのオンライン市場シェアの少なくとも3~6%は、COVID-19を機にデジタルチャネルを使いこなせるようになった高齢者層をはじめ、新たな消費者セグメントが占めることになるだろう」と指摘しています。

多くの商品カテゴリーにおいて、実店舗が閉店や規模の縮小を迫られる中、Eコマースはますます重要なチャネルになりつつあります。特に、優れたオンライン体験を提供できる機能を備えた小売業者が存在する国々では、COVID-19の終息後もこうした傾向が持続することが予想されます。

今後はあらゆる年齢層の消費者が、混雑した実店舗ではなく、「安全」なオンラインショッピングに高い価値を見いだすようになるはずです。

新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)による影響 – ダッシュボードでは、さらに多くのインサイトが得られます。ぜひ、ご覧ください。