【トレンド分析】 この春夏、旅行はどう変わる? コスト高が、次の旅行へのトリガーに

2026年4月21日更新

もうすぐ待ちに待ったゴールデンウィーク。旅行を予定している方も多いのではないでしょうか?今年は物価高や円安、世界情勢の変化など不安材料も多い中、旅行の行先やスタイルにも少なからぬ変化が現れています。最新の調査データから、最新の旅行トレンドとその背景を読み取っていきましょう。

「これ以上高くなる前に行こう!」~値上がりが新たな旅行の動機に

まず注目したいのが、直近の旅行動向です。

アジアを中心に展開する旅行プラットフォームKKday JAPANの調査(※1)によると、2026年のゴールデンウィークに向けた海外体験の予約は、直近の短期間で最大約2.2倍に増加しています。

この背景にあるのが、燃油サーチャージの上昇や円安によるコスト増です。
実際、全日本空輸(ANA)と日本航空(JAL)は、2026年6月発券分から国際線の燃油サーチャージを大幅に引き上げる見通しを発表。原油価格の高騰を受け、各社の燃油サーチャージは従来の1.5倍〜2倍程度に上昇し、欧米路線では片道5万円前後に達する水準となると報じられています。 燃油サーチャージは「発券(購入)時点」で決まるため、同じ旅行でも購入タイミングによって負担が大きく変わります。

そうしたなかで旅行者の中に広がっているのが、「これ以上高くなる前に行っておきたい」という意識です。
将来の値上がりを見越して、いまのうちに動く——。この“先回り”の判断が、旅行需要を押し上げているのです。
ここで興味深いのは、価格が上がっているにもかかわらず、旅行そのものは控えられていない点です。

・タイミングを早める
・予約を前倒しする
・行き先や過ごし方を工夫する
といった形で、旅行計画の立て方が変わっているにすぎません。

つまり、いま日本の旅行市場で起きているのは、
コスト上昇=需要減ではなく、「行くタイミングを変える力」として働いているという構造的な変化なのかもしれません。価格は旅行を止める要因ではなく、むしろ意思決定を動かすトリガーになっているのです。この動きは、今年のGW以降の旅行トレンドを読み解くうえで、非常に重要なポイントと言えるでしょう。

“いまどきの旅”はこう変わった——Z世代が映す新しいスタンダード

こうした“駆け込み需要”や行動の変化は、単なる一時的な動きではありません。
その背景には、旅行そのものに対する価値観の変化があります。
デジタル旅行プラットフォーム・アゴダの「2026年トラベル・アウトルック・レポート」(※2)によると、とくにZ世代の旅行スタイルには、旅行に対する価値観の変化を象徴する特徴がはっきりと表れています。キーワードは、「短く・近く・頻繁に、そして体験重視」です。

まず注目すべき大きな変化は、1度当たりの旅行に費やす時間が短くなっていること。日本のZ世代の約67%が、1〜3日間の短期旅行を選択しています。かつてのように長期休暇を使って一度に遠くへ行くのではなく、短い旅を生活の中に分散させるスタイルが主流になりつつあります。旅は特別なイベントというよりも、気分を整えたり、自分をリセットしたりする「日常の延長」として選ばれるようになり、その結果、旅のハードルは下がり、頻度は高まっています。

行き先にも変化が見られます。アゴダの調査ではZ世代の約75%が国内旅行を予定しており、近場を選ぶ傾向が強まっています。これは単なる節約志向ではありません。SNSなどを通じて、これまで知られていなかった地域やスポットが可視化され、「近くでも新しい体験ができる」「遠くに行かなくても、近場にもまだまだ面白い発見がある」という認識が広がっています。旅行先の価値は距離ではなく、どれだけ新しい発見があるかで判断されるようになり、遠くへ行くことそのものよりも、「自分にとって新しいかどうか」が重視されるようになっているようです。

さらに象徴的なのが、旅行の目的です。Z世代が挙げる主な動機は、リラックス、食体験、文化体験といった「その場所で何をするか」に関わるものです。観光地の知名度よりも、体験の中身が意思決定を左右する傾向が強まっているようです。とくに日本では「食」を目的に旅先を選ぶケースが増え、グルメそのものが旅の主目的になることも珍しくありません。つまり、旅の選び方は、「どこに行くか」から「何をしに行くか」へと大きくシフトしています。

こうした価値観の変化は、先ほど言及した「駆け込み需要」の高まりとも無関係ではありません。旅行の回数やスタイルは柔軟になっている一方で、旅の目的はより明確になり、「ここにはしっかりお金をかける」という意識が高まっています。体験にはきちんと投資し、時間は無駄にせず、限られた予算と時間の中で満足度を最大限に高める——そんな考え方が定着しつつあるようです。旅そのものはより軽やかに楽しめるものになりつつありますが、その選び方やお金の使い方は、これまで以上に慎重で、納得感を重視するものへと変わってきていると言えるでしょう。

売り手に問われるのは「選び方」の設計

今まさに起きている、旅行にまつわる変化は、旅行の選び方だけでなく、情報との出会い方にも影響を与えています。
どこへ行くかではなく、何を体験できるか。「価格」ではなく、その時間にどれだけ「価値」を感じられるか。
そうした基準で選ばれる時代においては、単に交通手段や宿泊施設の選択肢を提示するだけではなく、「その旅でどんな価値が得られるのか」を具体的に描けているかどうかが、意思決定を大きく左右します。

また、タイミングも重要な要素です。今回見てきたように、価格の変動は需要を減らすだけでなく、行動を前倒しさせるきっかけにもなります。つまり、いまの旅行は、「どのタイミングで」「どんな文脈で」情報が届くかによって、選ばれ方が大きく変わる領域になっていると言えるでしょう。

出典:
※1株式会社KKDAY Japanプレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000183.000028214.html

※2 Agoda international Japan 株式会社 プレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000047.000152576.html