特集コマースメディア② リテールメディアとコマースメディア、それぞれの特徴

更新日 2025年06月02日

デジタル広告の世界で近年注目されている「リテールメディア」と「コマースメディア」。似たような文脈で語られることが多いですが、厳密には異なる概念です。それぞれの特徴と違いを整理しておきましょう。

1. リテールメディアとは?

リテールメディアとは、主に小売業者(リテーラー)が自社の保有する顧客接点をメディア化し、広告枠として提供する仕組みを指します。

例えばスーパーマーケットやドラッグストアのECサイト、スマホアプリ、デジタルサイネージ、購入後に届くメールマガジンなどが該当します。これらのチャネルにメーカーやブランドが広告を出すことで、購買意欲の高まっている最適なタイミングでユーザーにリーチできるのが特徴です。

代表的な例としては、Amazonの「Sponsored Products」や、ウォルマートのリテールメディアネットワーク「Walmart Connect」などがあります。小売業者は自社のECサイトなどをメディアとして提供できる他、自社で保有するファーストパーティ・データを活用した広告配信サービスを提供して広告収入という新たな収益源を得られることになるため、日本国内でも、イオンやセブン&アイ、楽天などが力を入れている領域です。

2. コマースメディアとは?

一方、コマースメディアはもう少し広く、リテールメディアを内包した概念です。認知から購買までの導線におけるあらゆる段階で広告やコンテンツを展開し、最終的に購買行動へと結びつけることを目的としたマーケティングメディア全般を指します。

狭義では、小売業者に限らず、航空会社や金融など、小売以外の業種がリテールメディアのような取り組みを実施することが、コマースメディアに当たります。

広義のコマースメディアではさらに、自社で保有する顧客接点やファーストパーティ・データを広告配信に活用し、収益化することが可能です。新たな収益源をもたらすビジネスモデルとしても注目を集めています。

コマースメディア施策の例

  • 航空会社が、銀行の顧客の支出履歴に基づいたターゲティングを実施し、旅行関連の支出が多い顧客に、航空会社の特別オファーを提示する
  • ラグジュアリーブランドが、大手ホテルチェーンが保有する旅行者の検索・予約データに基づいて、高所得層の旅行者をターゲットにホテルの公式予約サイト上に広告を配信
3. 違いは「メディアの主体」

リテールメディアとコマースメディアの違いは、「誰がメディアを運営しているか」がカギになります。

リテールメディアは、小売企業が運営し、多くの場合、売り場や購買地点(レジやECカート)に非常に近い場所で広告が展開されます。ユーザーの購買データを活用しやすく、広告の効果測定も比較的容易です。

一方、コマースメディアは小売業者だけでなく、旅行、不動産、金融、人材など、業種を問わず消費者データを保有する様々な企業が運営者になり、商品やサービスの販売に次ぐ新たな収益の柱を作ることができます。

両者の理解が、これからのマーケティング戦略に不可欠

リテールメディアとコマースメディアの活用はいずれも、「広告」と「購買体験」が融合する新しいマーケティング手法です。どちらも今後ますます重要になると予想されますが、それぞれの役割や強みを正しく理解しておくことが、効果的な施策設計の鍵となります。

自社のプロダクトやターゲットにとって、今アプローチすべきはどこなのか──媒体選定やKPI設計の際には、ぜひこの点を意識してみてください。

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特集コマースメディア③「Criteoコマースメディア、強さの秘密」に続く