「巣ごもり消費」で好調!電子出版市場+28%を記録

電子コミックの売上が市場全体の成長を牽引

新型コロナウイルスの影響で幅広い業界が打撃を受ける一方で、売り上げを伸ばしている業界もあります。出版業界もその一つ。公益社団法人全国出版協会の調査によると、2020年の日本の出版市場(紙+電子の推定販売額)は前年比4.8%増の1兆6,168億円を記録、大幅な成長を遂げました。

市場拡大をけん引したのは、電子出版物の普及です。2020年の電子出版物の推定売上額は3,931億円で、前年比28%増を記録、出版市場全体の成長を大きく牽引しました。

電子出版物の中でも特に大きな伸びを示したものが電子コミックで、推定売上額は前年比31.9%の3420億円を突破、電子出版市場全体における電子コミックの市場占有率は87%にも達しています。

紙媒体も健闘!

電子出版物のみならず、書籍や雑誌といった紙媒体の出版物も健闘しました。2020年の紙の出版物(書籍・雑誌合計)の推定販売金額は前年比1.0%減の1兆2,237億円(書籍が同0.9%減の6,661億円、雑誌が同1.1%減の5,576億円)と、いずれも小幅な減少にとどまっています。

このうち書籍は、2020年3月から始まった学校の一斉休校を機に学習参考書、児童書などが大幅に伸び、年間を通じて好調な売り上げを維持しました。このほか、文芸書やビジネス書、コンピュータ関連書籍、ゲーム攻略本などのジャンルも前年を上回りました。

一方、雑誌部門ではコミックス(単行本)が、「鬼滅の刃」の大ヒットなどを背景に約24%と大幅増を記録。月刊誌(コミックス、ムック含む)は前年比0.5% で、1997年以来、23年ぶりの前年超となっています。一方の週刊誌は前年比8.5%減と苦戦、月刊誌も発売中止や延期が相次ぎ、前年比9%減、ムックも前年比14%減と、厳しい結果となりました。リモートワークが定着して通勤途中に週刊誌や月刊誌を購入する人が減ったこと、感染対策で雑誌を店頭におく美容院や飲食店が減ったことなどが理由として挙げられます。

背景には「巣ごもり消費」の拡大

こういった出版市場の好調を支えているのは、外出自粛による「巣ごもり消費」の拡大です。株式会社BookLiveがおこなった「“在宅の一人時間“に関する意識調査」で、「外出自粛で増えた在宅の一人時間を何に使っているのか」を尋ねたところ、最も多かった回答が「マンガを読む」でした。「マンガ以外の書籍を読む」も8位にランクインしており、外出自粛を機にマンガや本を読む時間が増えた人が多いことがわかります。

また、同調査で「これからやりたいこと」について聞いたところ、ここでも「読みたかったマンガを読む」が1位、「マンガ以外の書籍を読む」が4位にランクイン、増えた在宅時間を読書に費やしたい人が多いことがわかりました。

出典:BookLive!プレスリリース

2020年は「巣ごもり消費」と「鬼滅の刃」に支えられて成長を遂げた出版業界。巣ごもり消費の継続に加え、人気作家の作品が次々に電子化解禁されていることなどから、2021年も引き続き好調に推移することが期待されています。これまで書籍に親しんでいなかった世代を、電子化によっていかに取り込むのか、各メディアや出版社の手腕が問われそうです。