トレンドに変化あり!2024年の春節商戦振り返り

旅行者の数は増えるも、コストは減少

中国政府が2月18日に公表した今年の春節に伴う大型連休(2月10日~17日)の観光収入は、約6,327億元(約13兆2,000億円)で、2023年の春節連休比で約47%も増加しました。2023年にコロナ対策のロックダウンが解除されたこと、例年に比べて連休が1日長かったことが、数字の増加につながったと見られています。なお、旅行に出かけた人の数自体も伸びており、今年の春節連休期間中に中国国内を旅行した人の数は、コロナ禍前よりも19%多い4億7,400万人で、前年(2023年)比でも34%も増加を記録しました。このように一見、コロナ前を上回る勢いで回復したかに見える中国の旅行市場ですが、その内訳をみると、必ずしも景気上昇を反映しているとはいえないことがわかります。というのも、観光収入や旅行者数が増えている反面、旅行にかける費用は減少傾向に。中国政府は公式なデータを示していませんが、ロイター通信の試算によると、国内旅行1回あたりにかける費用は平均1335人民元(約2万6,700円)で、2019年の1475元(約2万9,500円)を9.5%も下回っており、消費のダウングレード傾向が如実に現れる結果となりました。

訪日中国人観光客数、回復は伸び悩み

一方、中国人の海外旅行については、国内旅行よりも大きく回復が遅れています。イギリスの調査会社オックスフォード・エコノミクスの予測では、2024年の中国の海外旅行客数は2019年比で8割ほどにしか回復しないと見られています。

この傾向は中国から日本への旅行客数を見ても明らかで、2023年8月に日本への団体旅行が解禁されたにもかかわらず、訪日中国人旅行客は期待されていたほど増えていません。2019年には中国からの訪日客は959万人と、訪日外国人全体の3割を占め、国・地域別で最多でしたが、2023年は243万人と、かつての勢いには遠く及びません。日本政府観光局が発表した2024年1月の訪日中国人客数は約41万5,900人で前月に比べ10万人以上伸びたものの、2019年の約75万4,000人に比べると約44.9%にとどまっており、やや期待外れ感は否めません。

とはいえ、中国人旅行客にとって日本はまだ人気の旅行先。中国最大級の観光サイトMafengwoが発表した「2024春節ビッグデータレポート」によると、日本は中国の海外旅行人気国ランキングで第2位にランクインしています。

また、人気の海外都市TOP10では5位に東京、7位に大阪がランクインしました。

【中国の海外旅行人気国TOP5】(出典:Mafengwo)

1位:タイ

2位:日本

3位:シンガポール

4位:マレーシア

5位:ベトナム

旅行の「主役」や「形態」に変化も!

Mafengwoのリポートからは、中国の旅行客の主役について興味深い変化が見られることもわかりました。同リポートによると、今年の春節に旅行した旅行客の約6割が女性。しかも、1980年~2000年代生まれの若年世代が全体の9割を占めていることがわかりました。そして、同リポートが分析した今年の春節旅行の人気テーマは以下のとおり。

【2024年春節旅行の人気テーマ】

  • ディープな文化の旅
  • 親子旅行
  • 温泉旅行
  • スキー旅行

かつては、中国人観光客の代名詞的存在だった「中高齢者のツアー客」ではなく、より自由に自分らしい旅を楽しむ若い個人旅行者が、旅行市場の主役になりつつあるようです。

「爆買い」ではなく「店頭体験」を求める傾向が顕著

では、かつては日本における春節の風物詩といっても過言ではなかった「爆買い」は、どうなっているのでしょうか。WWDによると、中国人旅行客に人気の銀座三越化粧品売り場の今年の春節期間中の商況は前年比92%増を記録。春節連休に合わせて、中国人人気インフルエンサーを使ったプロモーションを実施、店頭への多言語スタッフ配置強化などが功を奏したと見られますが、それでも、2019年同時期に比べると27%減で、コロナ前の水準に戻っていません。

その背景にあるのが、中国人観光客による「爆買い」の鎮静化です。銀座三越によると、いわゆる爆買いが鳴りを潜め、自分自身がほしいアイテムや家族・友人に頼まれた商品を購入する客、店頭でのカウンセリングやタッチアップを希望する客が増えているとのこと。商品そのものだけでなく、日本のデパートならではの丁寧で上質な購買体験を求める中国人客が増えていることが見て取れます。

こういった客の特徴として指摘されるのが、クレ・ド・ポーやシャネルなど高級ブランドのアイテムを購入すること。そして、事前に商品についてしっかり調べており、購入する商品を決めてから来店するケースが多いこと。つまり、春節というお祭りムードに浮かされて散財するのではなく、しっかり情報を集めて商品の品質・効果を見極めた上で、上質な商品を上質な空間・接客の下で買いたい人が増えているということです。

多様化が進む訪日観光客

そして、春節商戦を巡るもう一つの大きな変化は、訪日観光客の多様化が進んでいるということ。日本では春節=中国の印象が強いですが、実は中国だけではなく、台湾やシンガポールでも春節は大切な祝日であり、多くの人が連休を取って旅行を楽しむ習慣があります。

実際、日本政府観光局(JNTO)の発表した2024年1月の訪日外客数を見ると、最多は韓国で85万7,000人(訪日外国人全体の31.9%)でした。韓国に次いだのは台湾の49万2,300人(同18.3%)となり、韓国と台湾で約半数を占める結果に。一方、中国は全体の15.5%にとどまっており、中国以外の国々がますます存在感を増しています。

来年2025年の春節は1月29日。中国景気の先行きが不透明な中、来年の春節商戦を戦うには「春節=爆買い・中国人」という思い込みの払しょくが必要だと言えるでしょう。