ワーケーションで農業体験「アグリケーション」が人気

アグリケーションとは?

新型コロナウイルス感染拡大とともにすっかり定着した、テレワーク。テレワークを実践中の人の多くは在宅勤務の体制をとっていますが、もともと仕事用ではない空間で1日中仕事をするのは、意外とストレスがたまるもの。ネット環境や家具の不備でイライラしたり体が疲れてしまう人、1日家族と顔を突き合わせていることでケンカが増えてしまった人、通勤がなくなって太ってしまった・・・という人も少なくないのではないでしょうか。

そんな在宅ワークに疲れた人たちが、実践しているのがワーケーション。ワークとバケーションを組み合わせた造語で、リゾートなどに滞在しながら仕事をするワークスタイルのことで、コロナ禍による観光客激減に悩むリゾート地や温泉地のホテルや旅館が「ワーケーションプラン」を次々に発売しています。

そして、このワーケーションの、いわば進化版として注目を集めているのが「アグリケーション」です。つまり仕事とバケーションを両立させるワーケーションに、さらに農業を組み合わせたワークスタイルのこと。リゾートや体験型農園などに宿泊して働きながら、空いた時間に農業を楽しむ人が増えているのです。

そういった人たちのニーズに応える宿泊施設付きの体験農園や、ワークスペースを兼ね備えた農園も各地に登場。例えば新潟県妙高市の体験型市民農園「クラインガルデン妙高」では、「ラウベ」という簡易宿泊施設と150平方メートルの農園を長期で貸し出しており、首都圏からの利用者も。首都圏の自宅を離れて1か月のうち10日~15日ほどラウベに滞在し、テレワークの合間に農場で野菜を育てる人もいます。

また、埼玉県深谷市に2021年春にオープンしたばかりの「ONE FARM深谷Works」は、水耕栽培装置を設置したコンテナにワークスペースを併設、栽培中の野菜に囲まれながら仕事をすることができるようになっています。

一方、「なかなか地方にまではいけない」という人たちの間でも、農業への関心は高まっています。都内の区民農園の人気が年々高まっており、特に目黒区では今年の区民農園利用の応募倍率が昨年の1.7倍に上りました。

高感度なビジネスパーソンが農業に注目する理由は?

ではなぜ今、農業に心惹かれる人が増えているのでしょうか?

その理由の1つとして注目を集めているのが、農業の持つストレス軽減効果、いわゆる「アグリヒーリング」(農による癒し効果)です。順天堂大学の研究によると、農場で農業体験をした人の唾液を、体験前後で比較したところ、体験後はストレスホルモンが減少、代わりに「幸せホルモン」と呼ばれるオキシトシンが盛んに分泌されることが明らかになりました。農作業を通じて植物や土、水、新鮮な空気に触れることによって生じる様々なセラピー効果が、複合的に心身に影響を与えることにより、心身のストレスが軽減され、幸福感を得やすくなるものと考えられています。オキシトシンには幸福度を増すだけでなく、仕事へのやる気や向上心を掻き立て、コミュニケーションを増進する効果もあると言われており、ハードな仕事をこなすビジネスパーソンに農業に関心を持つ人が多い理由も、このあたりにありそうです。加えて、今は在宅ワークで溜まりがちなストレスを解消したいという意識の高まりが、ビジネスパーソンを農業へと駆り立てているのかもしれません。

出典:順天堂大学HP