加速するフリーランス活用。その効果とは?

1034万人超、増え続けるフリーランス

新型コロナウイルス感染拡大の影響でリモートワークが一気に普及した2020年。自宅で働く時間が増えたことを機に、自分の働き方について考えるようになった人も多いのではないでしょうか。通勤時間がなくなったことで浮いた時間を使って副業を始めた人、転職や独立を考えて動き出した人もいることでしょう。パソコンとインターネット環境さえあれば、想像以上にいろいろな仕事ができる今の時代、起業して会社を興さなくても、個人がフリーランスとして独立して働くことへのハードルは年々下がりつつあります。

実際、人材仲介サービスのランサーズが2020年に行った調査では、副業などを含む広義のフリーランスは国内で約1034万人に上り、2015年比で約13%も増加しています。また、同調査ではここ1年以内にフリーランスとして働き始めた人が312万人もいることがわかりました。

内閣官房が2020年に全国のフリーランス7500人を対象に行った調査では、フリーランスで働くことを選んだ理由として最も多かったのが、「自分のスタイルで働きたい」で57.8%、「働く時間や場所を自由にするため」が39.7%、「収入を増やすため」が31.7%でした。企業に勤務する「安定」よりも、自分らしく自由度の高い働き方を求めて、フリーランスになる人が多いことがわかります。

フリーランスを活用する企業、その狙いは?

このようにフリーランスが増えている背景には、発注側である企業のフリーランスに対する姿勢が変わったからだと言われています。少し前まで、新卒一括採用と終身雇用が根強い日本の企業は、「情報漏洩のリスクがある」などの理由からフリーランスの活用に消極的でした。2017年に経済産業省が行った調査でも、フリーランスを活用している企業は全体の約18.9%に過ぎませんでした。

しかし、ここにきて状況は大きく変わり、企業の規模を問わず、フリーランスを積極的に活用しようという動きが顕著になってきています。

企業側の転機となったと指摘されているのが、DXの進展です。デジタルによる組織やビジネスモデルの変革が迫られる中、企業内の人材だけでは技術革新の波についていけなくなる企業が続出、その救世主として外部の人材、特に高い専門性をもつフリーランスへ直接業務を委託する例が増えているのです。日本経済新聞では、3月16日付の朝刊でフリーランス活用加速の例として、DXを担うチームの過半数を占めているSOMPOホールディングスの例を紹介、その背景について「DXの流れは急で社内人材をゼロから育成する余裕はない。同時に社外の人材が新しい風を吹かせることで生まれる化学反応への期待もある」と分析しています。

経済産業省の調査でも、企業がフリーランス活用に期待する効果としては、「技術・ノウハウや人材の補完」が最も多く、次いで「従業員の業務負担の軽減」、「売上高の増加」、「必要な人材を自前で確保するコストの削減」が続きました。

もちろん、フリーランスは企業と正規の雇用関係にはないので、原則としては企業が雇用保険や労災保険、社会保険の保険料を負担することはありません。このため、コスト削減のためにフリーランスを活用しているのではないかという批判もあります。しかし、先にあげた内閣府の調査でも、フリーランスで働くことを選んだ人の8割が「これからも企業に所属せず、フリーで働き続けたい」と回答していることからもわかるとおり、安定よりも自由な働き方を志すフリーランスにとっては、福利厚生や社会保険料負担は、フリーランスで働くことを止めてまで手に入れたいものではなくなっています。優れたフリーランスはすでに引く手あまたの状況となりつつある今、企業には「フリーランスが働きたいと思える企業」であるための環境や労働条件の整備が求められるようになってくるのではないでしょうか。