私がアメリカの老舗百貨店メイシーズ(Macy’s)で働いていた頃、美容は非常に重要なカテゴリーでした。香水のテレビコマーシャルなどでもご存じのとおり、美容商品の広告はどれだけストーリーを伝えられるかで差がでます。このことから、私は、リテールメディアにおける動画の可能性に期待するようになりました。
私は動画広告とショッパブル広告を並列で展開できる理想的な構成を目指して、動画広告ソリューションの構築に乗り出しました。そしてすぐに、その理想を実現するためのツールがまだ存在していないことに気づいたのです。しかし、最適なソリューションができるのを待つのではなく、自分でソリューションを構築することで、大きな成功を掴むことができました。しかし、自分の理想を叶えるためには、依然として複雑な課題が残されていました。
そして現在、オンサイト動画広告は未だ発展途上の状態ではありますが急速な進化を遂げており、手軽さと高い効果を両立する存在になりつつあります。職業柄、ブランドや小売業者と話す機会も多いですが、オンサイト動画広告の活用意向がより高まっていると感じています。 今こそ、オンサイト動画広告のキャンペーンをスタートする絶好のチャンスです。オンサイト動画広告はブランドにとっても、小売業者にとっても、消費者にとっても「勝ち」の前提となる条件です。なぜなのか。さらに詳しく説明したいと思います。
ブランド広告主にとってのメリット:ブランド認知とパフォーマンス向上の融合が可能に
今後数年間に投資する分野についてブランドとの会話の中で、従来のテレビ広告への関心が薄まり、オンサイト動画広告への投資意欲が急速に高まっているという話をよく耳にします。認知の向上とコンバージョンの促進を両立できるオンサイト動画広告がブランドにとって革命的なものであることを考えれば、当然の流れと言えます。
従来、ブランドコンテンツはアッパーファネル、つまり認知段階で活用されていましたが、オンサイト動画広告を利用すれば、消費者が商品について調べているときや各商品を検討しているときなど、購入意欲が高まるタイミングでリーチすることができます。感情を動かすストーリーでブランドへの関心を高め、すぐそばに購入可能な商品が並んでいる。この構造が消費者の意思決定に強く影響を与えるのです。動画広告の効果を最大化するうえでも、非常に有効です。
さらに、小売業者のサイトで動画広告を配信するということは、ブランドセーフティを確保しつつ、クローズドループでの効果測定ができるということです。新規購入者に関する指標を把握できることで、コンバージョンの促進だけでなく、新規顧客の獲得についてもトラッキングが可能になります。
事実、オンサイト動画広告は、新規顧客の獲得において高い効果を発揮します。Criteo では、スポンサード広告のみを配信するキャンペーンと、オンサイト・ディスプレイ広告やオンサイト動画広告と同時にスポンサード広告も配信するキャンペーンを 比較したところ、後者の新規顧客獲得数は前者の5.6倍になりました。 理由は明白です。新規顧客の獲得には、類似した商品があるという事実だけではなく、競合他社と比較して自社が優れていると思ってもらう必要があります。これは、表面的な接点だけでは達成できません。動画コンテンツは、より深いレベルで消費者にブランドのことを知ってもらい、正真正銘の、感情的なつながりを生み出すチャンスを作りだすのです。
小売業者にとってのメリット:消費者の体験を強化し、ブランディング予算の獲得につなげる
小売業者は、お客様のショッピング体験をとても大切にしています。「お客様を喜ばせたい」と願っています。ある小売業者は、エンゲージメントを促進するリッチメディア・コンテンツを使用してサイトの魅力をより引き上げるために、オンサイト動画広告を利用しています。多くの小売業者は「欲しいと思っている商品以外のアイテムにも関心を持ってもらうにはどうしたらいいか」という課題も抱えています。新規顧客獲得コストが上がっている昨今、小売業者のサイトを訪れてくれる消費者は、一人ひとりがとても貴重な存在です。オンサイト動画広告を利用すれば、購入する予定ではなかった商品を検討してもらうことができ、最終的には平均単価の向上に買い物かごのサイズを一回り大きくしてもらうことにつながります。
オンサイト動画広告は、広告主により多くの予算を投下しておもらうためのカギにもなります。多くの場合、小売業者はまず、すでに取引のあるメーカーや関係者から、ショッパーマーケティング予算を獲得します。でもこれだと、従来は店頭の販促費を扱っていた部署から、リテールメディアの担当部署へと、予算の獲得部門が社内でシフトしただけです。リテールメディアを展開する小売業者にとっての最終目的は、ブランドマーケターにとってン戦略的なメディアパートナーとなることで、新たな追加予算を勝ち取ることです。 オンサイト動画広告は、ブランドのマーケティング予算を握る新たなメディアバイヤー・チームにアプローチするための入り口となるのです。
新たなフォーマットに伴う懸念
小売業者がオンサイト動画広告を提供する際、その広告はデジタル広告に期待されるメディア品質の基準を満たしている必要がある、という点には注意が必要です。ここでは売り場で築いてきた信頼とは別に、新たな信頼を獲得する必要があるのです。メディアバイヤーに新しいフォーマットとしてオンサイト動画を提案するなら、彼らが日常的に利用している指標や機能を備えていなければ意味がありません。
広告を配信するだけでなく、標準化され、一貫性のあるインサイトやレポートの提供が求められます。小売業者の多くは自社のウェブサイトで動画コンテンツを配信する手段をすでに持っており、独占掲載型の準抗告枠として販売することも技術的には可能です。しかし、ブランドがオンサイト動画を本格的な広告施策として活用しようとするなら、高精度なターゲティングと、効果を測定できる仕組みが必要です。広告主にとって、新規顧客獲得率やリピート購入率といった広告の効果測定指標はあって当然のものです。オンサイト動画広告は、こういったブランド広告主の期待に応える必要があります。
オンサイト動画は、クリエイティブ要件のような、顧客のショッピング体験全体に関わる新たな懸念も生じさせます。ディスプレイバナー広告の承認はわかりやすく簡単でしたが、動画広告においては新たな基準が必要になります。レイテンシやサイトの読み込み速度への影響を抑えながら実装する方法など、丁寧かつ戦略的なアプローチが求められます。
ユーザー体験の一貫性を維持することも、オンサイト動画を提供するうえで重要な要素です。小売業者がさまざまな広告フォーマットでサービスを拡大していく中で、メディアバイヤーと社内の運用体制の断片化に悩まされることもよくあります。 新たな広告フォーマットは通常、それらに適したツールやテクノロジーが必要となるため、キャンペーンの管理や効果測定が複雑化しがちです。各フォーマットでバラバラなテクノロジー・ソリューションをつなぎ合わせるのではなく、オンサイトの広告フォーマットを単一のプラットフォームに統合することで、小売業者は大きなメリットを得ることができます。
Criteo では、スポンサード広告、オンサイト・ディスプレイ広告、オンサイト動画広告、オフサイト広告を一元的に提供しており、キャンペーンの設定や最適化、効果測定のすべてを一貫して行える環境を実現しています。一元化により、ブランドは、小売業者のサイトの複数のタッチポイントを活用したキャンペーンの作成を簡単に行えるだけでなく、配信とパフォーマンスのバランスをより総合的に取り、シームレスな予算管理ができます。結果として、ワークフローの効率が上がり、インサイトの一貫性が高まり、ブランドも小売業者も成果を挙げることができます。
まだ始まったばかり
オンサイト動画広告がリテールメディアのラインアップに加わったことが素晴らしいことであることに疑いはありません。しかし、私が本当にワクワクしているのは、その先に広がる未来です。 私たちは、現段階ではフォーマットの選択肢を増やしています。今後はこのようなフォーマットの購入方法も広げていきたいと考えています。 Criteoで進めているイノベーションは、リテールメディア業界全体を次のフェーズへ導くための原動力になると信じています。その只中にいる人間として、次の展開が待ちきれません。