ファンの声が聞こえる「コミュニティサイト マーケティング」とは?

最近、自社製品に特化した「コミュニティサイト」を設置する企業が増えています。コミュニティサイトは、一般的に特定の商品やサービスごとに作られ、メンバー(コミュニティ登録者)が感想や使用方法などを自由に書き込んだり、メンバー同士で会話や情報交換ができるようにしてあるサイトのこと。一般的なSNSと違い、その商品やサービスの利用者、もしくは関心がある人だけが集まり、その商品やサービスに特化した話題で盛り上がるのが特徴です。ここでは、わかりやすい例として、スキンケアアイテムが人気の化粧品ブランド「アテニア」のコミュニティサイト「アテニア ファンコミュニティ」を見てみましょう。

座談会やインタビューでは聞けない、顧客の本音やリアルトークがあちこちに

アテニア ファンコミニティは、アテニアのアイテムのことや、美容や生活について自由に書き込める「おしゃべりルーム」と、アテニアのアイテムを実際に使用した感想などを書き込める「おためしルーム」とに分かれており、両ルームともメンバーは13万人を超えています。メンバーはルーム内の掲示板で自由にトピック(テーマ)を立てることができ、そこに興味・関心のあるメンバー、共感するメンバーが書き込みを重ねていきます。

たとえば、ある日のおしゃべりルーム。あるメンバーがファンデーションを顔に塗るためのパフ「トリプルフィニッシュパフ」というトピックを立て、「パフには専用ケースがついていますが、ファンデーションで汚れた使用後のパフをケースにいれるのには、抵抗が。だから、私は100円ショップで買った石鹸ケースに入れています。通気性もよく、汚れたら簡単に洗えるのでお気に入りです」とのコメントを写真付きで投稿。すると、それを見た別のメンバーが「私も同じ悩みを持っていました。石鹸ケース、真似します!」「私もケースが汚れるのがいやなので、パフは使用するたびに洗っています」などと、次々に書き込んでいきます。トピックの内容は、「お気に入りのアイテム」や「美容液の残量の確認法」、「好きなルージュの色」など多岐に渡り、メンバー同士が感想や自分なりのハウツーを披露。掲示板にコメントを書き込んでいるメンバーはもちろん、それを読んでいるメンバーや一般の閲覧者にも、どんどん情報が共有されていきます。当然、この掲示板でのやりとりの中には、企業にとって新製品開発や既存製品の改良にあたってのヒントがたくさん隠れている…ということになります。

掲示板でのやりとりは匿名で行われるため、企業にとっては座談会やインタビューといった対面式の聞き取り調査よりも、顧客のリアルな本音を吸い上げられるというメリットも。ある洗剤メーカーでは、同様のコミュニティサイトに投稿されたメンバーのリアルな声をウェブサイトに投稿したところ、アクセス数が増加。また、商品パッケージにその投稿内容を印刷したところ、売上が上昇したケースもあるそうです。

サイトの成否をわける、企業側の姿勢

コミュニティサイトの掲示板には、随時企業側からのアンケートや質問、プレゼントキャンペーンや限定イベントなど、お得な情報も書き込まれます。アンケートに答えると商品購入時に利用できるポイントが貯まるサービスを用意している企業もあります。アンケートに答えたりプレゼントに応募したりするために、定期的にコミュニティサイトを訪問する習慣が定着すると、メンバーの企業やブランドへの親近感はますますUP。ごく自然な形で顧客ロイヤルティが醸成されていきます。そして、コミュニティサイトでますますブランドや商品への愛着を持つようになったメンバーが、自身のSNSや実生活で、その魅力を発信してくれれば、新たなメンバーやファンの獲得にも繋がります。

良いことづくめのコミュニティサイト マーケティングですが、もちろんコミュニティサイトを設置すれば成功するというものではありません。成功の秘訣は早急に成果を求めず、中長期的視野で取り組むこと。時間をかけて着実にメンバーとの信頼関係を築き、企業やブランド、商品への愛着を高めるような施策を絶え間なく提案し続けることが大切です。そして、決してコンバージョンだけを求めないこと。顧客メリットよりも企業側のメリットを重視した施策は、すぐにメンバーに見抜かれ、ファン離れに繋がってしまいます。「ものを売る場」ではなく、「お客様の声を聴く場、交流する場」として、コミュニティサイトをとらえること、そこからマーケティング戦略を立てることが何よりも大切なのです。