急成長するデジタル音声広告市場、 2025年の市場規模は420億円に

Club Houseブームは一瞬で去ったけど・・・

2021年の年初、突如として盛り上がったClub House。一時はSNS上に「招待枠あります」「招待してください」の投稿が溢れていましたが、ブームはあっという間に鎮静化。今では全く話題にも上らなくなってしまいました。しかし、Club Houseの登場により、日本でも音声メディア市場が一気に活性化、VoicyやPodcast、Spotifyなどがユーザー数を増やしています。

特に日本生まれの音声メディアとして知られるVoicyはClub Houseブーム前の2020年末に100万人だったMAUが2021年3月には250万人を突破、3か月で2.5倍増という驚異的な成長ぶりで話題を集めました。Voicyの主なコンテンツはビジネスのプロや芸能人などによる「声のブログ」、4大マスメディアの記事が声で聴ける「メディアチャンネル」、企業が発信する「社外報(オウンドメディア)」など。最近は著名人の参加や企業とのコラボレーションも増え、幅広い音声コンテンツの集まった総合プラットフォームとして拡大を続けています。

音楽配信でますます存在感を増しているのがスウェーデン生まれのSpotify。クラウド上の音楽をスマートフォンで聞き放題にできる「ストリーミング」の生みの親として知られ、2008年の創業わずか10年でアクティブユーザーを世界178か国・地域の4億人にまで伸ばしています。会員数は今も伸び続けており、2021年3月末の市場シェアは32%と、Apple(16%)やAmazon(13%)といった「巨人企業」を大きく上回っています。

音声メディア市場、成長の背景は?

元祖・音声メディアであるラジオの聴取率が低迷する中、なぜ今、音声メディアに人気が集まっているのでしょうか?

Voicyの創業者で代表取締役CEOの緒方健太郎氏は著書「ボイステック革命」の中で、音声メディア成長の背景や多くの人に支持される理由について、次のように指摘しています。

① 「ながら」聴きができる

音声メディアは通勤中に歩きながら、家事をしながら、運転をしながら・・・と、何かの作業と並行しながら聴けるので、忙しい現代人のライフスタイルに取り込みやすいのが特徴。コロナ禍で在宅時間が増えたことをきかっけに、家事や在宅ワークをしながら音声メディアを聞くようになった人も多いと言われています。

② 目で見るコンテンツよりも気持ちが伝わりやすい

音声コンテンツは目で見るコンテンツよりも発信者の気持ちがダイレクトに伝わりやすいため、人間関係の希薄さに寂しさを感じている現代人の心に刺さりやすいと言われています。文字や動画など目で見るコンテンツが溢れる時代、それらを見ることに疲れた人にも音声メディアは受け入れられやすいとの指摘も。

③ 一般人でも発信者になれる仕組みができた

YouTubeやTikTokなどのプラットフォームが登場するまで、放送設備を持たない一般人が音声メディアを発信するのは難しく、ラジオに代表される従来の音声コンテンツの発信者は「プロ」に限定されていました。しかし、技術やインターネットの進化で一般人でも手軽に発信・視聴できる環境が整ったことにより、リスナーや発信者の裾野が広がり、市場の盛り上がりが加速しています。

④ 高機能なデバイスの登場

高機能なワイヤレスイヤホンやスマートスピーカーなどの音声聴取デバイスの普及により、ストレスなく音声メディアを聞けるようになったことも、音声メディア市場拡大につながっています。

Z世代にも支持される音声メディア

また、ラジオに比べてリスナーに若者が多い点も、今の音声メディアの特徴の1つです。Voicyが2021年8月にZ世代を対象に行った調査では、回答者の72.5%が「音声コンテンツをよく聞いている、聞く機会が増えた」と回答、音楽配信サービス以外の音声メディアを利用していると回答した人も32.5%に上りました。音楽はストリーミングが当たり前、移動中も勉強中も常に耳にワイヤレスイヤホンを入れたままで過ごすのも珍しくないZ世代は、今後、音声メディア市場の強力な牽引者となっていくものと思われます。

出典:株式会社Voicyプレスリリース

デジタル音声広告の市場規模、2020年は16億円

音声メディア市場の拡大に伴い、デジタル音声広告市場(インターネットを通して配信される、音声を主軸とした広告)も急成長を続けています。デジタル市場の調査・分析を手掛ける株式会社デジタルインファクトの調査によると、2020年の音声広告市場規模は16億円、2021年以降は広告主によるブランディングなどを目的にした出稿需要の高まりと、大手広告事業者による新規参入が進むことなどにより急速な市場拡大が進み、2025年には420億円規模になると予想しています。

とはいえ、音声メディアの先進国・アメリカではすでにデジタル音声広告市場の市場規模が30億ドルを超えていることを考えると、後発市場である日本にはまだまだ成長の余地がありそうです。市場拡大のカギと指摘されているのは、配信先の拡大。今はまだデジタル音声広告の配信先が限られていますが、今後、配信先が増えれば広告主が望む層のリスナーへのターゲティングも可能になり、市場拡大につながっていくと考えられます。また、音声コンテンツならではの持ち味を生かした新たなデジタル広告の価値が生み出されれば、ますます幅広い広告主による需要の喚起も期待できるでしょう。