急成長中!デジタルサイネージ広告に注目

街角や商業施設の中、駅や電車の中などあらゆる場所で屋外デジタル広告(デジタルサイネージ)を見かけることが増えました。ポスターや看板とは違い、聴覚にも訴えることができる上に、手軽に内容変更できるのが魅力で、最近では一般的な広告媒体としてだけではなく、災害時の情報システムとして利用されるケースも増えています。今回は、デジタルサイネージとは何なのか、その市場の現況や今後の展望についてみていきましょう。

デジタルサイネージ広告、成長の主役はネットワーク型

一般社団法人デジタルサイネージコンソーシアムの定義によると、デジタルサイネージとは「屋外・店頭・公共空間・交通機関など、あらゆる場所で、ディスプレイなどの電子的な表示機器を使って情報を発信するメディアの総称」であり、大きく分けて、①スタンドアロン型と②ネットワーク型とに分けることができます。

①スタンドアロン型: インターネットに接続しないタイプで、再生装置と基本機器のみで完結するタイプ

②ネットワーク型: インターネットに接続して利用するタイプ。システムの構築が必要だが、遠隔操作が可能で表示内容変更が容易

現在、導入が進んでいるのは利便性が高い②のネットワーク型で、高画質大画面ディスプレイの普及や薄型軽量化が進んだこと、同時にモバイル端末との連携が容易になったことなどを背景にプロモーションメディアとしての需要を大きく伸ばしています。

2018年、デジタルサイネージ市場は1,659億円規模に

デジタルサイネージ市場の成長は著しく、マーケティング&コンサルテーションの株式会社富士キメラ総研(本社:東京都)が行った「デジタルサイネージ市場総調査 2019」によると、2018年のデジタルサイネージ市場の規模は、過去最高の1,659億円に。ネットワーク環境の整備やサービスの低価格化を背景に、中小企業や個人事業主、自治体や公共施設、教育・医療機関等での導入が増えたことが、成長を牽引しました。さらに設置数の増加や配信ニーズの多様化により、デジタルサイネージ専用のコンテンツ制作や広告販売など、新たな周辺ビジネスが創出・成長したことも市場全体の成長を加速したものと考えられます。

2020年以降もデジタルサイネージ市場の成長は続く見込みで、同調査では、2025年には市場規模が3,186億円にまで達すると予想しています。特に2020年は東京オリンピックを控え、首都圏の交通機関や公共施設、大型商業施設を中心にデジタルサイネージの新設や改良案件の増加が予想されるほか、訪日外国人を対象にした多言語対応システムやAIロボットを活用したシステムなどへのニーズが高まるものと見られています。

市場全体の成長を支えるデジタルサイネージ広告

デジタルサイネージ市場全体の成長を支えているのが、デジタルサイネージ広告市場の成長です。前述の富士キメラ総研による「デジタルサイネージ市場総調査 2019」では、デジタルサイネージ広告市場は2018年に675億円、2025年には1,800億円に達すると予想しています。

デジタルサイネージ広告は大きく分けて「交通広告」、「ビルボード(屋外ビジョン)広告)、「インストアメディア広告他」の3つに分けられますが、これまで市場の牽引役を果たしてきたのは、駅や電車内に表示される交通広告です。最近では鉄道に加え、タクシーやバスの車内、道の駅等の道路サービス施設での設置が急増していることから、デジタルサイネージによる交通広告の需要は、今後ますます拡大していくものと見られます。

大掛かりなビルボード(屋外ビジョン)広告については、主要駅前や繁華街での新規設置は減少傾向にあるものの、ショッピングセンターや家電量販店などの店舗壁面、高速道路や幹線道路沿いの設置が増加しており、市場全体としては拡大しています。

インストアメディア広告については、これまでスーパーや家電量販店を中心に設置されていましたが、最近ではコンビニエンスストアや公共施設での設置も大きく増えており、同調査では「今後は交通広告以上の伸びが期待される」としています。

成否のカギはターゲティング

動画配信や多言語展開など多彩な可能性を秘め、今後ますますの成長が期待されるデジタルサイネージ広告ですが、従来の広告と同じく、効果がなければ何の意味もありません。単なるブランド認知や会社の知名度アップのための広告ならまだしも、商品やサービスの売上向上を目指すのであれば、デジタルサイネージ広告においても「どんな内容の広告をどこで、誰に対して打つのか」というターゲティング戦略が欠かせません。

2018年には資生堂と駅スペースでの交通広告を手掛ける株式会社NKBが共同で、性別推定システムを活用した「男女別ターゲティングデジタルサイネージ」の実証実験を都営浅草線の新橋駅で行い、話題を呼びました。この実証実験では、サイネージ広告の前を通るのが男性の場合は男性向けの、女性の場合は女性向けの広告を配信、インターネット上の広告配信と同様にブランドのメインターゲットに合わせた広告配信を行うことで、デジタルサイネージのメディア活用における可能性を検証しました。今後、このような広告配信が可能になれば、デジタルサイネージ広告の市場はさらに拡大するものと考えられます。ネットよりも「ユーザーやリアルな消費の場に近いメディア」としてのデジタルサイネージの可能性に、引き続き要注目です。