オムニチャネル戦略との違いは?

2017年に中国人の投資家リ・カイフ氏が提唱したマーケティングの新たな概念「OMO」が、注目を集めています。

OMOはOnline Merges with Offlineの略語で、直訳すると「オンラインとオフラインの融合」、つまりユーザーがチャネルの違いを意識せずに買い物やサービスの利用ができるように、オンラインとオフラインを分けずに一貫したマーケティング戦略を構築していこうという考え方のこと。これまでもチャネルを横断するマーケティング戦略として、O2O(Online to Offline オンライン上の情報提供により顧客を実店舗に導く戦略)や、オムニチャネル(顧客情報を一元管理し、どのチャネルでもコンバージョンできるようにする戦略)などが知られていましたが、OMOとそれらの戦略との決定的な違いは、OMOは単にコンバージョン(購入)のみを目的としているのではなく、ユーザーエクスペリエンスの向上を目的に据えている点です。つまり、これまで別個に活用されていたオンラインとオフラインの顧客データを融合して活用することによって、顧客にこれまでにない上質なユーザーエクスペリエンスを提供するためのマーケティング戦略が、OMOなのです。近年の急速なDX化やコロナ禍を背景に、オンラインショッピングがかつてないほど幅広い層に普及している中、企業目線でECと店舗で提供サービスを分けて考えるのではなく、「利用者目線」「利用者体験志向」で、オンラインとオフラインのチャネルを融合し、より良い利用者体験を提供するOMOに注目する企業が増えています。

オンワード樫山、OMO型店舗出店を加速

23区やICBなどのブランドで知られる人気アパレルメーカー「オンワード樫山」もその1つで、2021年春からOMO型店舗「ONWARD CROSSET STORE/SELECT」の出店を始め、2021年10月現在で全国13都府県に計14のOMO型ショップを展開しています。同社OMO型店舗出店の目的について「実店舗とオンラインストアの強みを融合し、利用者がより便利に買い物体験ができること」としており、今後も出店を拡大していく方針を示しています。

出典:オンワードホールディングスプレスリリース

ONWARD CROSSET STORE/SELECTの特徴は、自社のアパレルや雑貨のほか、コスメやフェムテック商品、インテリア雑貨など、ブランドの垣根を超え、他社ブランドも含めて、来店者が「今、欲しい」と感じられる様々な商品をバリエーション豊富に取り揃えている点。そして、店頭での物販だけでなくオンライン上の商品をブランドを問わず取り寄せて試着・購入できる「クリック&トライ」や、「リペア&メンテナンス」などのサービスを導入し、新たなユーザーエクスペリエンスを提供している点です。

オンワードホールディングスのプレスリリースによると、これらのサービスのうち、特に好調なのは「クリック&トライ」で、2021年2月より試験的にサービスを導入していたONWARD CROSSET SELECT高知大丸において、2021年3月~7月の売上のうち約半数(49%)が「クリック&トライ」を利用したものであったほか、同期間の購入客数のうち9割弱(87%)が同サービスを利用したものだったということです。

オンワードでは2021年6月に同社のメンバーシッププログラム「オンワードメンバーズ」を対象として行ったアンケートで、「(同社公式ECサイトの)オンワードクローゼットではなく実店舗で購入した理由」を聞いたところ、最も多かったのが「実物を確認して購入したいから」で全体の42.2%、次いで「試着して購入したいから」(37%)という回答結果を得ており、OMO型ショップでは、これらのニーズに応えるサービスを提供していることになります。

大丸松坂屋、「百貨店の再定義」にOMO戦略

このほか、大丸松坂屋百貨店では、中期3か年計画の中で「百貨店を再定義する」とし、百貨店の店舗を「モノを売る場所」から、価値あるコンテンツを伝達する「オフライン上のメディア=リアル・メディア」と位置づけ、その中心である「人の力」を活用して、オンラインでもオフラインでも、商品だけでない新たな体験価値を提供することを宣言しました。その一環として2021年度中に新サイト「コスメOMOショッピング」を立ち上げ、オンライン配信や関連性の高い記事の発信、店頭サービスの紹介など、オンラインとオフラインを融合させることによって、これまで以上に顧客とのタッチポイントを拡充し、「ワクワクしながらコスメを楽しむ新しい顧客体験を提供」したいとしています。

OMO先進国と言われる中国では、小売りのみならず金融やエンターテインメントなど幅広い業界でOMOの概念を取り入れたサービスが次々と生まれており、オムニチャネルを超える次世代のマーケティング戦略として定着しています。日本でも今後、DX化やキャッシュレス化の進展にともなって、OMO型サービスの需要はますます高まっていくものと考えられます。OMO戦略の成否のカギを握るのはオンライン・オフラインのデータの収集ですが、「どんなデータをいかに多く集めるのか」だけにとらわれると、企業目線でのサービスしか提供できません。OMO本来の趣旨である「顧客目線」を忘れず、「データを提供してくれた顧客に、データ分析によって得られた利益をどう還元するか」という視点を持つことが重要だと言えるのではないでしょうか。

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