「昨日の革新は今日の日常」と語るのは、FeelUniqueの最高執行責任者(COO)を務めるジム・バックル(Jim Buckle)氏です。以下の動画では、美容関連のオンライン小売業者として急成長を遂げた同社のビジネスの秘訣を紹介しています。
FeelUniqueの知名度は、日増しに高まりつつあります。オンライン上で化粧品の販売を行う小売業者は、一見してどこも同じように見えますが、その中にあって、FeelUniqueは異彩を放っています。Eコマースにおけるデータドリブンの自動化戦略と、顧客の声に耳を傾ける人間ならではの力を融合した、他社にはない独自のマーケティング戦略で成功を収めているのです。COOのジム・バックル氏の「昨日の革新は今日の日常」という言葉は、常に進化を遂げながら、過酷なまでの競争が繰り広げられる今日のデジタル市場の状況を、的確に言い表しています。
FeelUniqueは、2005年の創業以降、持続的な成長を続けており、直近の財政報告によると、同社は2017年3月末の決算で前年比27%増の8千万ポンドを計上。2018年度はさらに50%増のペースで成長を続けており、年間収益は1億ポンドに達する見込みです。
この成功の裏には、さまざまな要因があります。たとえば商品数の増加(SKUが17%増えて2万8,000種類に)、中国市場への進出(2015年に参入し、現在はグループ全体の売上の10%を占める)、ファッション意識の高いミレニアル世代からの支持の獲得(顧客の65%は35歳未満)などが挙げられます。
バックル氏は、こうしたレベルの成長を遂げることは極めて困難なことだったと振り返ります。
「私たちのビジネスはかなり急速に成長を遂げたので、周囲からは、たいして大きな困難もなく、すんなり成功したのだろうと誤解されがちです。しかし実際には、私たちの成長は様々な困難を1つひとつ工夫しながら乗り越えてきたからこそ得られたものです。私たちの場合、1つのやり方に固執せず、地域の特性に合わせて柔軟にビジネスのスタイルをアレンジしてきたことが、現在の成長に大きく貢献したのではないかと思っています。例えば、FeelUniqueは、イギリスではすでに定着しています。フランスでも、まだ小規模ではあるものの、急速な成長を見せていますし、中国でも、良好なパートナーシップを基盤に飛躍的な成長を続けています」。
顧客の声に耳を傾ける
FeelUniqueの商品ラインナップは実に幅広く、500以上ものサードパーティブランドの商品を扱っています。それらのブランドには、トム・フォードやシャネルなどの有名デザイナーのブランドから、ニッチで小規模なものまでさまざまです。
しかし、商品がいくら豊富でも、ロイヤルティの高い顧客や新規顧客を獲得できるようなオファーがなければ、何の意味がありません。そのため、同社ではカスタマーサービスに積極的な投資を行い、顧客の声に真摯に耳を傾け、その声に応えるサービスを展開することに誇りを持っています。
「私たちはさまざまな方法を駆使して、顧客の声に耳を傾けています。カスタマーサービスチームに直接寄せられる意見のほか、SNSの分析や顧客に対する調査も行っています」とバックル氏。
「数か月前に、顧客を継続的に調査できる新しいツールを導入したところ、サービスを変更した際に、顧客からどのような反応があるかについて、正確に把握できるようになりました。また、自社のサイトをモニタリングし、顧客の行動傾向だけでなく、サイト上でコンバージョンに至らなかった場合の行動の分析も行っています」
こうしたさまざまな取り組みを基盤に、FeelUniqueは競合他社の一歩先を行く革新的なサービスを実現しています。たとえば最近では、同社は年間8.95ポンド(定額)の会員料を支払うだけで、無制限に翌日配送が可能になるサービスを始めました。
また、FeelUniqueにおいてテクノロジーは、欠かすことができない重要な役割を担っています。
「1年ほど前から、バーチャルにメイクを試せるアプリを提供しています。これは顧客体験改善のためというよりも、むしろ技術面での挑戦として行っているものです」とバックル氏。こうした高度なテクノロジーの実験的活用にも、同氏のモットーである「昨日の革新は今日の日常」が反映されています。
また、バックル氏のチームはオンラインチャットの開発を社内で検討しており、単なるボットによるコミュニケーションではなく、動画を使って文字通り「対面で」アドバイスを受け取ることができるチャットサービスを提供したいと考えています。
「その後、自動化できる部分を増やして機能を次のレベルに進化させることができるでしょう。つまり、初めの2~3個の質問を自動応答にして省略すれば、時間の節約になります」と分析するバックル氏ですが、「他にもまだ十分に自動化されていないものがあります」と話しており、例として、「ショッピング体験に新たな要素を追加して、それをもとに人々がインスピレーションを得られるようにする」ことなどを挙げています。
「私たちは今、顧客の好みに関する膨大なデータと、商品に関する膨大なデータを組み合わせて活用する方法を探っています。これらを利用して美容関連に特化したレコメンデーションエンジンを構築すれば、FeelUniqueのウェブサイトにとって非常に利用価値の高いものとなるでしょう」
チャネルによってブランドのトーンを変化させる
もちろん、他の企業と同様に、これまでFeelUniqueも多くの課題に直面してきました。「自社のブランド体験と、パートナー企業のブランド体験をいかにして両立するのか?」という課題も、そのうちの1つです。
「すでに高いブランド価値を確立しているハイエンドな高級ブランドの商品を扱う場合、彼らのニーズに応えると同時に彼らの価値を傷つけないように配慮することが、オンラインの環境では非常に重要です」とバックル氏は指摘します。
「しかし、それは簡単なことではありません。一般的に美容関連商品は生活必需品ではなく、あくまで顧客が自らの意志で選択する嗜好品であり、宣伝や広告に左右される部分が大きいからです」
バックル氏は、ブランドのイメージを崩すことなく、各ブランドらしいトーンを維持することが同社のSNS戦略における目下の優先課題であること、そして、この課題が足かせとなってビジネスの成長スピードが鈍化していたことを認めました。
「しかし、ここ数年間、この課題解決に取り組んできたおかげで、今では、これまでの遅れをほぼ取り戻して、自社のプレゼンスを十分に確立できるようになった」と付け加えています。
「私にとってSNSは、どのチャネルも扱い方が少しずつ異なるという点で、非常に興味深い分野です。つまり、チャネルによってコンテンツの種類やキャンペーンのトーンを変える必要があるからです。たとえば、TwitterとInstagramを同じように扱うわけにいきませんよね。ブランドのルック&フィールやトーンを全体的に統一する必要はありますが、各チャネルを適切に使い分けることが極めて重要になります」
「昨日の革新は今日の日常」
バックル氏は、FeelUniqueの今後のさらなる成長を強く確信しており、特にEコマースにおける「3つの柱」を強調しました。つまり、「①幅広い商品ラインを、②適切な価格で提供して、③効率的に配送すること」
「次に、その他のすべてを何らかの形で付け加えること」そして「昨日には革新的だったものが、今日には日常となる。つまり、常に未来に目を向け、日常になりそうなものを常に模索していくこと」であるとしています。
これは前述したメイクを試せるアプリの試行錯誤を同社が今も続けている理由でもあります。
「私たちはこうした分野に自ら足を踏み入れ、その仕組みを理解し、将来的には自分たちでもそれを作りたいと考えているのです」
この投稿はCriteoがスポンサーとして参画し、Hot Topics.htとともに作成したソートリーダーシップシリーズの動画の一部です。このシリーズでは、小売マーケティングやデジタル、Eコマース企業の経営幹部を取り上げ、高級ブランドや著名ブランドが利用しているツールやテクニックを紹介しながら、既存顧客の維持や新規顧客の獲得を通じた企業の成長について探っていきます。