加速し続けるインターネットのスピード、ますます増大するスマートフォンのデータ容量。動画のストリーミング配信が当たり前になった今、スマートフォンやスマートテレビはケーブルテレビの座に取って代わろうとしています。「オンラインであること」と「何かを視聴すること」は、もはやほぼイコールになっています。こうした傾向は今後ますます強まっていくはずです。
事実、買い物客のオンライン滞在時間のうち、3分の1は動画の視聴に費やされており、FacebookやYouTube動画の視聴時間が1週間あたり1時間を超えるユーザは全体の45%にも上ります。好調な視聴率は、同時に収益化のチャンスももたらします。動画広告が対前年比で40%も増加している背景には、こうした理由があるのです。Ciscoでは、今後2年の間でインターネットトラフィックの80%以上は動画ベースになるだろうと予想しています。
特に動画広告は、すでに小売業者やブランドがアウェアネスや顧客の興味・関心を喚起するための重要な手段となっていますが、そもそも顧客注目を効果的に集める広告とは具体的にどのようなものなのでしょうか?
ここでは、動画マーケティング戦略で成功を収めている3つのブランドについて見ていきたいと思います。
1. Nike:「Choose Go」
https://www.youtube.com/watch?v=6MgmbV5SbsA
スポーツ用品販売の世界的大手として知られるNikeは、地球の自転が止まった世界で世界中のランナーが地球を回転させるために団結するというストーリーの動画「ストップアポカリプス」を独自に制作しました。登場するランナーたちが身に着けている服や靴は、もちろんすべてNike製です。この60秒間のスポットCMには、コービー・ブライアントやケヴィン・ハート、ビル・ナイといったセレブも登場しており、テレビとSNSで今年3月1日に公開されました。
製作はポートランドの代理店「Must Be Something」が担当、監督には「ベイビー・ドライバー」で名声を得たエドガー・ライトが起用されました。動画はアクション満載のユーモラスなストーリーで、自社の商品(ランニングシューズ)をアピールするとともに、「普通の人々とともに、さらにセレブたちにも影響を与えながら、スポーツの名のもとに偉業を達成する」という同社の価値観が表現されています。緊張感のあるストーリー、セレブの起用、勝利のエンディング、そして簡潔でキャッチーなタグライン「#ChooseGo」がうまく融合して、SNSでのシェアに最適なコンテンツに仕上がっています。
動画はこれまでに、Facebookではシェア4,600回と視聴120万回、またYouTubeでは460万回の視聴回数を記録しています。
2. REI:「あなたの『だって』は何?」「週末動画プロジェクト」
https://www.facebook.com/REI/videos/10156019564876484/
もっとも、すべてのブランドにセレブを動画に起用できるほど余裕があるわけではありません。予算にあまり余裕がない場合は、自社の顧客を動画コンテンツの主役に起用するのも1つの方法です。
たとえば、ユーザが自ら作成した画像や動画コンテンツを「ユーザ生成コンテンツ(UGC)」と呼んでいますが、ある調査では、UGCを利用したウェブサイトやキャンペーンはコンバージョン率を30%近くも高める効果があることが報告されています。
このUGCを活用して2つのキャンペーンを展開したのが、アウトドア用品の小売を手掛けるREIです。1つは「What is your But(あなたの「だって」は何?)」と題された懸賞キャンペーンで、ここではユーザから募ったエピソードを短い動画に仕立てています。
もう1つの「Video Weekend Project(週末動画プロジェクト)」キャンペーンでは、REIの顧客やYouTubeユーザが作成した動画を活用しています。同社は顧客らがアイスクライミングやパドルボードを楽しんでいる動画を集めて、YouTubeでプレイリストを作成しました。
3. Glossier:「Wowder」の使用法を学べる動画
ミレニアル世代に人気の化粧品ブランドとして急成長を遂げるGlossierは、ユーザ生成コンテンツ(UGC)を自社ブランドのブログや商品サイトに上手く活用しています。同社の動画が特徴的なのは、単に商品を紹介するだけではなく、ユーザ目線で商品の使い方を説明していることです。
たとえば、フィニッシュパウダー「Wowder」の発売にあたっては、ブランドのYouTubeチャンネル、ウェブサイト、SNSに3つの動画をアップし、それぞれの動画では肌の色が異なる3人の女性が「Wowder」を使用する様子を紹介しています。
視聴者は動画を見ながら商品の使用法を学ぶことができ、さらに自分の肌に使用した際の見え方をイメージすることもできます。また、動画の最後には商品の使用前後の比較も紹介されています。なお、動画の上部にはCTAが配置されており、クリックすると「Wowder」の商品ページに移動し、詳細の確認や商品の購入に進めるようになっています。
現在の動画マーケティングキャンペーンを見直す
ユーザがオンライン動画を視聴する時間が増えるに伴って、動画マーケティングも拡大の一途をたどっています。これはブランドにとって大きなチャンスですが、このチャンスを最大限に活かすには、買い物客にとって魅力的なコンテンツを提供することが不可欠です。
その意味で、彼らの興味・関心を効果的に喚起するNike、REI、Glossierの事例は非常に参考になります。
1. ハリウッドに学ぶ
Nikeのように予算が潤沢なブランドであれば、映画制作の手法に倣って動画を作成し、同レベルの競合に対抗しても良いでしょう。プロによる監修、オリジナルのBGM、スターやハリウッドの映画監督の技術サポートが得られれば、自社のブランドを瞬く間にスターダムへと押し上げることができるはずです。
もちろん、カメラクルーやセレブがいなくても、楽しくてワクワクするような動画を作成することはできますが、その場合はストーリーを工夫するのが効果的です。
2. 顧客の声を利用する
ブランドのメッセージに多くの顧客の共感を集めるためには、すでに商品を愛用している顧客に代弁してもらう以上に、優れた方法はありません。REIの「あなたの『だって』は何?」キャンペーンでは、ユーザから質問を募ることで彼らとブランドとの対話の場を生み出し、マーケティングチームがその質問に答えていきました。
また「週末動画プロジェクト」では、ユーザがREIの商品を実際に使用している場面の動画をたくさん提供してもらいました。
それらの動画に表現されていたのは、等身大のユーザがアウトドアでリアルにREIの商品を使って楽しむ姿です。もちろん、動画にはREIの商品が使われており、動画からは同社の商品をリアルに楽しんでいるユーザの感情がダイレクトに伝わってきます。キャンペーンは大きな成功を収め、REIはまさに理想的な形でブランドアウェアネスを獲得することができました。
3. 顧客を教育する
顧客に商品の使い方を教えることが、購入のきっかけとなることがあります。
Glossierの「Wowder」の動画キャンペーンでは、ミレニアルピンクに彩られた33秒の動画でこれを実践しています。動画では3人の女性が商品を使用し、最後に使用前後の比較を見せることで、商品がいかに簡単に使えるかをアピールするとともに、ブランドそのものをハウツーコンテンツの発信地にしています。
CTAも画面の右上にさりげなく配置されています。
動画広告を使ったフルファネルアプローチ
動画マーケティングはアウェアネスの向上に最適ですが、そもそもユーザに見てもらえなければ何の意味がありません。
動画リターゲティングを活用すれば、チャネルに関係なく動画広告で買い物客にリーチすることができます。さらに、動画広告をリアルタイムにパーソナライズできるCriteoのDynamic Creative Optimization+なら、ユーザに最適化されたクリエイティブを用いて関連性の高いオファーを提示することが可能です。
実際、世界のマーケティングプロフェッショナルの実に51%が、動画コンテンツを最高のROI向上ツールと考えています。動画を使ったマーケティング戦略で、動画リターゲティングを活用しない手はありません。動画リターゲティングやその仕組みを詳しく知りたい方は、CriteoのEブック「リターゲティング201」をぜひダウンロードしてお読みください。