進化する「推し活消費」。推し活層へのアプローチが新規顧客に繋がる

更新日 2022年07月20日

今や、日常生活でごく普通に使われるようになった「推し」という表現。「他の人にすすめること。 また俗に、人にすすめたいほど気に入っている人や物」を指す際に使われます。推しの性別や次元は様々で、人やキャラクターとも限りません。たとえば「刀剣推し」や「城推し」のように無機物を「推す」人たちも大勢存在します。そして、その「推し」を応援する活動全般を指す「推し活」という言葉も、よく耳にするようになりました。最近は、「推し活」の在り方が多様化し、推し活関連の消費が拡大しています。今回は『推し活応援メディアOshicoco』と推し活専門ショッピングサイト『推し活モールOshicoco』を運営する株式会社Oshicocoが行った「推し活消費」に関するアンケート調査の結果をもとに、進化する推し活消費の現状と、求められるマーケティング施策について紐解いていきましょう。

「買う」だけではない「推し活消費」

推し活消費と聞いて、まず「推し」のDVDやグッズ、コンサートチケットの購入などを思い浮かべますが、Oshicocoでは、「単純に“アニメを見る”や“コンサートに行く”といった行為=推し活ではなく、推しに会う日を目的に美容院に行くなどの自分磨き、二次創作のイラストを描くなどの創作活動など、”推しによって日々の生活がより良くなる”その経験全てが推し活」だと分析しています。つまり、何かを購入する直接的な消費だけでなく、推し活につながる経験のすべてが新たな消費を生んでいるということです。

そこでOshicocoでは、よりリアルな「推し活」関連出費を計測するために、「グッズ費」「チケット費」など直接的な費用だけではなく、「遠征費」「参戦服の購入費」、推し活目的での「カフェ利用費」など、直接的に推しに関わらなくても、「推し活」に総合的に使っている費用も含めた、リアルな推し活消費の実態を調査。このほど、その結果を世代別に公表しました。

推し活、1か月にいくら使う?

1. 中高生・・・4人に一人が1万円以上を消費

出典:Oshicocoプレスリリース

Oshicocoの調査によると、回答者の中高生約4,700人中、なんと4人に1人が月に10,000円以上使っているという結果に。「推し活応援メディアOshicoco」のフォロワー、つまり「熱心に推し活をしている」中高生だからこそのデータともいえますが、予想以上に高い結果となりました。Oshicocoによると、回答者からは「お年玉、お小遣いのすべてを推しに使ってます!逆に、推し活以外にお金は使いません。日々節約しています」「推しが勉強や部活のモチベーションです」「推しのためにバイトを頑張っています!」という声が寄せられており、同社では「他の何かを我慢してでも「推し活」にお金を使いたいという熱量の高さが、10代の推し活消費の特徴だと考えられる」と分析しています。

2. 18歳~24歳:「3万円以上」が4割

出典:Oshicocoプレスリリース

次に18歳から24歳では、30,000円以下が6割、30,000円以上が4割という結果に。また、50,000円以上が15%にも上っています。Oshicocoでは「大学生から社会人数年目の若年層においてこれだけの支出があるということは、可処分所得のほぼすべてを推し活関連消費に使っているといえる」と分析しています。もちろん、その一方で、「月10,000円以内に抑える努力をしています」という声もあり、それぞれが自分の収支とバランスを取りながら推し活を楽しんでいる様子が伺えます。

3. 25歳以上:5万円以上が22%

続いて25歳以上では、10,000円から30,000円が最も多い結果に。

回答者からは「イベントがある月とない月とで変動。遠征があると10万円を超える月もあります。そのために仕事を頑張っているので大丈夫です(笑)」「地方住みで毎月東京に遠征。交通費+チケット費+グッズ費で50,000円くらいかかります。そのために働いています^^」という声が寄せられているそうです。Oshicocoでは「世代が上がるほど推しのイベントを『全通(※複数回あるコンサート「全部に通う」という意味)』する傾向の高まりを感じた」とし、「全体を通して、年齢が上がるほど月の支出額は増加傾向にある」と分析しています。

「主役のいない誕生日会」にみる、推し活消費の実態

では、推し活にいそしむ皆さんは、欲しいものを我慢してまで捻出した費用を具体的にどんな推し活に使っているのでしょうか。Oshicocoでは、「主役のいない誕生日会」を例に、その具体的内容を次のように解説しています。

<例>本人不在の誕生日会にかける費用の内訳

出典:株式会社Oshicocoプレスリリース

「本人不在の誕生日会」とはその名の通り、誕生日を迎える「推し本人」抜きで開催する、誕生日会のこと。アイドルやアニメのファンが、グッズや装飾を用いて「推し」の誕生を盛大に祝うために行われ、Oshicocoによると1人当たり平均で10,000円~30,000円、多くて70,000円~80,000円を使うこともあるそうです。つまり、「本人不在の誕生祭」を開催するために、グッズの購入のみならずキャラクター・IP(知的財産)が直接関わらない一般の商品やサービス(ホテルや交通、美容など)が大量に消費されているということ。Oshicocoでは、これこそが真の「推し活消費」だと指摘しています。

推し活へのアプローチが、新規顧客獲得の鍵に

推し活で、アイドルやキャラクター、IPに直接かかわらない一般の商品やサービスが大量に消費されているということは、逆にいうと、一見、推し活と何の関係もない商品やサービスでも、推し活層をターゲットにしたマーケティング施策を展開することによって、推し活層のニーズをつかみ、新規顧客にできるということです。実際、Oshicocoでは、推しのライブがオンライン開催になった推し活層が、ライブ観賞用に家庭用プロジェクターを使用しているのに着目。推し活層に向けて、プロジェクターのマーケティング活動を行ったところ、自分のお気に入りを積極的にSNSなどで広めてくれる新たなロイヤル顧客の獲得に成功。同社では「このようにキャラクターやエンタメ業界以外も、推し活層にマーケティングを行うことが今後有効になってくる」と分析し、推し活層向けマーケティング成功のカギは「コミュニケーションを生むかどうか」だと述べています。

同社によると、推し活で生まれるコミュニケーションは、大きく分けて①推し戸のコミュニケーション(投げ銭やコンサート、アニメ鑑賞)と②推し仲間とのコミュニケーションの2つ。日常的に時間を使うのは、後者です。たとえばSNSを通じて作品やコンサートの感想を言い合ったり、繋がったファン同士で推しにゆかりのあるカフェに行って飲食し、写真を撮ってSNSに投稿する、これはすべて推し活から生まれるコミュニケーションです。

この点を同社では、推しに対する「萌え」=「楽しむこと」であるのに対し、「推す」=友達と盛り上がる、一緒に楽しむことだと指摘、「推し活消費のマーケティングは単にメンバーカラーの商品を集めることや、キャラクター・アイドルを宣伝に使うことではありません。商品やサービスを体験する中で”SNSにシェアしたくなるポイント”を作り、”推し仲間同士のコミュニケーションを生む仕掛け”を作ることが最も重要です」と解説しています。

さらに、「今後推し活が広がっていく中で、自分の好きなものやサービス、それを提供する人や組織を応援するためにお金や時間を使う生き方が主流になる」との見解を示しました。たしかに、世界中で推し活が一大市場となりつつある中、直接推しと関係のない分野の商品やサービスにおいても、推し活消費を視野に入れたマーケティング施策はますます重要性を増していくでしょう。何がきっかけで、何が誰の「推し」になるのか予測するのは難しいですが、自社の商品やサービスがどんな「推し」と関連付けられるのか、常にアンテナを張っておき、関連づいたときに、いかにして推し活層にアプローチするか、何らかの策はあらかじめ練っておきたいものです。

出典:株式会社Oshicocoプレスリリース