SaaSビジネス、その強さの理由とは?

最近、何かと目にすることが増えた「SaaS(サース)」という言葉。SaaS関係のスタートアップや資金調達のニュースも多く、「今年はSaaS元年になるだろう」という声も聞こえてきます。では、SaaSとは具体的にどのようなビジネスモデルで、どこに強みやのびしろがあるのでしょうか?今回は改めてSaaSビジネスの基本についてご説明しましょう。

必要な機能を必要なだけ「所有」ではなく「利用する」

SaaSとは、Software as a Serviceの略で、一般的には月額もしくは年額の利用モデルで提供される、サブスクリプション方式のクラウドサービスのことを指します。世界的によく知られているSaaSには、クラウド上でファイルの共有ができるDropbox, 音楽ストリーミングサービスのSpotify, 画像編集サービスPhotoshopのAdobeなどがあります。

SaaS導入のメリットは、何と言ってもユーザ側がソフトウェアを「所有」する必要がなく、必要な機能を必要なときだけ「利用」できるようになること。そう、SaaSは「所有」から「利用」へというシェアリングエコノミーの象徴とも言えるビジネスモデルなのです。個人ユーザの場合はソフトウェアをパッケージで購入したりインストールしたりする必要がなく、利用料を支払えば、クラウド上にあるSaaSをいつでもどの端末からでも利用できるというメリットが。企業の場合はソフトウェアの開発・導入・維持管理・更新に要していた膨大なコストや労力をカットすることができるため、多くの企業が相次いでSaaSの導入を始めています。

SaaS導入の主なメリット

  • 導入コストが抑えられる
  • ソフトウェアをインストールする必要がない
  • 最新バージョンへの更新やセキュリティ対策などの維持管理業務が不要
  • 必要な機能を必要なときだけ利用できる

ニーズの高まりを受けて、SaaSを提供する企業も続々と登場しています。最近では日本経済新聞社がまとめた2018年の「主要商品・サービスシェア調査」で、SaaS事業を強化した米マイクロソフト(MS)が米アマゾン・ドット・コムを逆転し、クラウドサービスの世界シェア1位となったことが話題に。日本でも名刺管理のSansan,労務管理のSmartHR,資産・家計管理サービスを提供するマネーフォワードなどSaaSビジネスを手がける企業の成長が注目を集めています。

SaaSビジネス、成功のカギは「顧客満足度」

SaaSは、サービスのユーザ側だけでなく提供する企業側にとってもメリットの多いビジネスモデルです。中でも最大のメリットは、サブスクリプション方式の料金体系であるため、売上の予測がしやすく、キャッシュフロー主導型の事業拡大が可能であること。また、売り切り型の商品のように、売った時点で顧客との関係が終わってしまうのではなく、一定期間にわたって関係が持続するため、アップセルの機会が得やすいこと、顧客ロイヤルティが醸成しやすいこともSaaSビジネスのメリットと言えるでしょう。

しかし、SaaSには気軽に利用をスタートできるサービスであるがゆえのデメリットもあります。つまり、導入コストが低い分、実際に使用して合わないと判断した場合はすぐに他の類似サービスに乗り換えてしまう可能性が高いということです。また、いくら契約数を伸ばしても、解約率を下げることができなければ、ビジネスモデルとして破綻してしまうリスクが大きいことも指摘されています。

このため、SaaSビジネスを成功させるためには、まず顧客とのLTV(Life Time Value 生涯価値)を維持・向上することが欠かせません。売り切り型のサービスや商品と違い、サブスクリプション型のビジネスモデルでは顧客と継続的に関係性を強化していかなければ、高い確率で解約に繋がってしまうでしょう。契約締結後も、絶えず顧客満足度を高め続ける営業努力が求められます。契約後の顧客を放置するのではなく、定期的にコンタクトをとり、顧客からの要望や意見をヒアリングし、サービスに反映させる努力が欠かせません。長く良好な関係が続けば、契約の継続のみならずアップセルのチャンスも増え、結果として安定した収益モデルを維持できることになるからです。

そして、これはSaaSのみならずすべてのサブスクリプション方式のビジネスに当てはまる真理でもあります。「所有」から「利用」に消費の形が大きく変わりつつある時代、業種・業界にかかわらず、自社と顧客との関係はどうなっているのか、どう変えていくべきなのか、再検討が求められています。