2023年に注目すべき3つの法改正

更新日 2023年01月25日

ビジネスを取り巻く環境が大きく変化する中、2023年も多くの法改正が予定されています。「知らなかった」では済まされない新たなルールをしっかり把握し新しい「常識」にビジネスの成長・拡大を図りましょう。 

今回のブログでは2023年に予定されている法改正のうち、広告業界の皆様に関連のあるものをピックアップしてご紹介します。皆様の日々のビジネスにどうぞお役立てください、 

(1)米カリフォルニア州プライバシー権法(CPRA)

アメリカ・カリフォルニア州で2020年1月の住民投票で賛成多数により可決されたCPRA(California Privacy Rights Act、カリフォルニア州プライバシー権法)が、2023年1月1日から施行されました。CPRAは従来のCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)の規定を強化するための改正法案。改正点は多岐に及びますが、その多くは事業者の義務を増やし、消費者の権利を強化することを目的としています。ここでは特に抑えておくべきポイントをご紹介しましょう。 

①センシティブ個人情報の新規定

CPRAでは、センシティブ個人情報(Sensitive Personal Information)についての規定が新たに設けられました。センシティブ個人情報とは、人種、信条、健康情報、精緻な位置情報、ログイン情報(ID及びパスワード)、クレジットカード情報、メールやテキストメッセージの内容、運転免許証の情報などのこと。センシティブ個人情報を収集する事業者は、収集時の通知やプライバシーポリシーにおいて、所定の事項を開示する義務が課されますまた、消費者はセンシティブ個人情報を利用している事業者に対して、その利用範囲を法所定の範囲に限定することを要求することができます 

②共有に関するオプトアウトの権利を追加

CCPAでは、消費者が自身の個人情報の「販売」(sell)についてオプトアウトする権利を認めていましたが、CPRAでは「販売」に加えて「共有」(share)についてもオプトアウトの権利が認められることになりました。「共有」とは、金銭対価の有無を問わず、ターゲティング広告のために個人情報を第三者に共有もしくは開示することを指します。 

③個人情報取得に関する通知義務

CPRAでは、個人情報取得の際、CCPAで定められていた通知事項に加えて個人情報の予定保有期間、取得後の個人情報が販売・共有されるか否かについての通知も義務付けられました。すでに消費者に通知事項を伝えるテキストを利用している事業者は、CPRAに準じたテキストにアップデートする必要があります。 

(2)改正消費者契約法

2022年5月に成立した消費者契約法の一部を改正する法律が、2023年6月1日から施行されます。改正の主なポイントは以下の4点です。 

① 不当勧誘による契約の取消権を追加・拡充

事業者が消費者に対して、次の3つの方法で契約を締結した場合、消費者による契約の取消しが認められることになります。 

  • 勧誘をすることを消費者に告げずに、退去困難な場所に同行し勧誘した場合 

マッチングアプリなどで出会った相手をマンション等の個室に誘い、絵画やジュエリーの購入を勧めるケースなどが考えられます。 

  •  威迫する言動を交え、消費者が他者に相談の連絡をすることを妨害した場合 

威迫とは「脅迫に至らない程度の人に不安を生ぜしめるような行為」のこと、たとえば、誰もいない場所で「買ってくれないと困る」と声を荒げる行為や、勧誘の際に入れ墨を見せてすごむ行為などを指します。 

  •  契約前に目的物の現状を変更し、原状回復を著しく困難にした場合 

事業者が注文を受ける前に、消費者の自宅の物干し台の寸法に合わせて物干し竿を切断し、代金を請求した場 合など 

② 中途解約時の解約料についての説明義務

事業者は消費者に対して、中途解約時の解約料(解約違約金等)の算定根拠を説明することが努力義務とされました。事業者は消費者から求められた場合、どのような考慮要素および算定基準に従って「平均的な損害」を算定し、違約金が当該「平均的な損害」の額を下回っていると考えたのかについての概要を説明しなくてはなりません。 

③ 免責の範囲が不明確な条項(サルベージ条項)の無効

事業者の負う責任を限定する範囲を契約条項上は明らかにせずに、「法律上許される限り」といった曖昧な文言で記載する、いわゆるサルベージ条項が無効とされました。これまで「法律上許される限り事業者の損害賠償責任を免除する等のサルベージ条項を用いていた事業者は、「当社の損害賠償責任は、当社に故意又は重大な過失がある場合を除き、顧客から受領した本サービスの手数料の総額を上限とする」など責任の範囲を具体的に明示した条項に差し替える必要があります。 

④ 情報提供・開示に関する努力義務

次の3点について努力義務が課されました。 

  • 消費者の年齢や心身の状態を事業者が知ることができた場合に、個々の理解に応じた丁寧な情報提供を行うこと
  • 消費者が定型約款の内容を容易に知ることができるような措置を講じていない場合、定型約款の内容の開示を求める消費者の請求を行うために必要な情報を消費者に提供すること
  • 消費者の求めに応じて、消費者が解除権を行使するための必要な情報を提供すること 

(3)改正電気通信事業法

2022年6月17日に公布された改正電気通信事業法が、2023年6月16日に施行される予定です。電気通信事業法は、公共性のある電気通信事業の運営を適正化・合理化し、公正な競争を促進するための規制や制度を定めた法律で電気通信サービスが円滑に提供される仕組みを整え、利用者の利益と国民の利便性を確保することを目的としています。今回の改正では、Cookie規制(利用者情報の外部送信規制)が新設されたことで注目を集めています。 

ご存じのとおり、Cookieについては、ユーザーの意図を介さずに閲覧履歴や行動履歴が収集される点が、プライバシー保護の観点から問題視されています。そこで、20224月施行の個人情報保護法改正では「個人関連情報」を新設、Cookieは個人関連情報に該当すると規定され、個人関連情報を第三者に提供し、個人情報の紐づけを行う場合には、本人の同意が必要になりました。最近、企業などのHPを閲覧中に「Cookie使用についての同意」が求められるのはこの法改正によるものです。 

今回の電気通信事業法改正では、利用者に関する情報の外部送信に対する規制が新たに設けられ、この規制が適用される電気通信事業者は、利用者に対して情報送信指令通信を行う際、原則として以下いずれかの対応をとらなければならないこととされました。 

  • 総務省令で定める事項を利用者に通知する 
  • 総務省令で定める事項を利用者の知り得る状態に置く 

事業者のサーバーから行われるCookie情報の送信も、この「情報送信指令通信」に該当します。したがって、Cookieを利用している事業者は、今回の改正で新設されたCookie規制の適用を受ける可能性があります。 

このほか、2023年には、業務委託の条件面を契約書などに明記するよう義務付ける「フリーランス保護新法」や、権利者不明の著作物の二次利用手続きを簡略化する「改正著作権法」などが、国会で審議されることとなっています。また、海外で先行している環境や人権対応を巡る規制強化の動きも加速しています。ビジネスに関連する分野の法改正の情報を見逃さないよう、法律の専門家と連携して改正に対応できる体制を整えましょう。