日経クロストレンド「トレンドマップ2021下半期」~技術、マーケ分野、消費部門で躍進したキーワードは?

気が付けば2021年もあと1か月あまり。昨年に引き続き新型コロナウイルスの影響を大きく受けた1年でしたが、マーケティングや消費にはどんな変化が見られたのでしょうか?このほど日経クロストレンドが発表した「トレンドマップ2021下半期」から、今年のマーケティングや消費のトレンド、2022年への展望を読み取ってみましょう。

トレンドマップ2021下半期は、日経クロストレンドが2021年8月中旬~下旬にかけて実施した調査。編集部が選定した技術に関する28のキーワード、マーケティングに関する29のキーワード、そして消費に関する28のキーワードについて、それぞれの「経済インパクト」と「将来性」を5段階でスコアリングした結果をもとにまとめられています。

各分野でスコアを伸ばしたキーワード(2021年上半期調査との比較)/出典:日経クロストレンドプレスリリース

1)技術部門:「トークンエコノミー」が好スコアを獲得

まず、技術部門では、2021年に入ってから日本企業による参入も相次いでいる「NFTトークン(非代替性トークン)」のブームを背景に、「トークンエコノミー」が「経済インパクト」、「将来性」ともに高スコアを獲得しました。トークンエコノミーとは、円やドルなどの貨幣ではない、特定の業者が発行する代替貨幣=トークンを用いたブロックチェーン上の取り引きによって生じる経済圏のこと。たとえばLINEが発行する仮想通過LINKコインもトークンの1つ。LINEのブロックチェーン上でゲームや買い物をし、その料金をLINKコインで決済することができます。トークンには国際的な取引はもちろん、特定の地域で使えるローカル通貨としての可能性もあり、今後の経済のあり方を左右する存在としても注目を集めています。

2)マーケ分野:「OMO・オムニチャネル」が躍進

コロナ禍による外出自粛を背景に、EC市場が急拡大した2020年。その勢いは2021年になっても続いており、「一度オンライン化した消費習慣はもとに戻らない」との見方が強まっています。つまり、例えばコロナ前まで日用品は実店舗でしか購入していなかった人が外出自粛を機にオンラインでの購入を始めた場合、コロナ収束後もオンラインでの買い物を続けるだろうということです。そんな中、コロナ禍を見据えた事業戦略として注目を集めるのが「OMO・オムニチャネル」です。オムニチャネルとは、ご存じのとおり、企業と顧客のタッチポイントや販売経路をすべて統合し、総合的に顧客へアプローチする方法のこと。一方、OMOはOnline Merges with Offlineの略語で、直訳すると「オンラインとオフラインの融合」、つまりユーザーがチャネルの違いを意識せずに買い物やサービスの利用ができるように、オンラインとオフラインを分けずに一貫したマーケティング戦略を構築していこうという考え方のこと。オムニチャネルとOMOとの違いは、前者が「購入」を目的としているのに対し、後者はユーザーエクスペリエンスの向上を目的としていることにあります。

たとえばアパレル大手・オンワード樫山は、2021年からOMO型店舗「ONWARD CROSSET STORE/SELECT」の出店を始め、2021年10月現在で全国13都府県に計14のOMO型店舗を出店、店頭での物販だけでなくオンライン上の商品をブランドを問わず取り寄せて試着・購入できる「クリック&トライ」や、「リペア&メンテナンス」などのサービスを導入し、新たなユーザーエクスペリエンスを提供しています。OMO・オムニチャネルが推進されてオン・オフ問わず顧客データを蓄積できるようになると、CRMの⾼度化にも繋がります。今後はデジタルで消費者と直接つながり、関係性を築いていく仕組み作りが一層求められるのは間違いないでしょう。

3)消費部門:「オタク消費」に注目!背景にはZ世代の「推し活」が

消費分野で将来性スコアを伸ばしたのは「オタク消費」。オタク消費が伸びている背景として指摘されているのは、Z世代で広がる「推し活」です。「推し活」とは好きなアイドルや俳優、キャラクターなど、特定の対象を熱狂的に応援する動きで、日経クロストレンドによると、Instagramではハッシュタグ「#推しのいる⽣活」が81万7000件以上も投稿されています。自由になるお金を「推し」のためには惜しげもなく使う、そんな若い世代の消費行動=オタク消費は今後ますます市場での存在感を増していきそうです。幅広の透明テープに油性ペンで推しの名前を書いてグラスに貼り付けた「推しグラス」や、トレーディングカードを⼊れた透明ケースをシールやラインストーンで飾る「トレカケースデコ」など、推しグッズの制作にハマる⼈も続出。日経クロストレンドでは「こうした消費者の強いこだわりをいかに自社商品・サービスに取り込むか、あるいは作り出すことが今後はヒットの条件になりそう」と分析しています。

コロナ禍の影響で景気の低迷が懸念された2021年にも、トークンによる新たなデジタル市場の出現、オンラインとオフラインの融合、加速するオタク消費など興味深いトレンドが見受けられました。来年2022年は景気が荒れるという通説のある寅年。コロナ禍の収束が期待される中、市場がどのような展開を見せるのか、注目が集まります。