日本発の新たな試み「情報銀行」の普及は進むのか?

 

情報銀行とは?

「情報銀行」とは、氏名や住所、インターネットでの購買履歴などの個人情報を利用者から集めて預かり、利用者の同意を得た上で他社に提供する企業のこと。利用者は情報提供の対価として、料金の割引やポイント、現金などを得られるほか、個々の属性や嗜好にあわせたサービスを受けられることになっています。

情報銀行の制度自体は2018年6月に総務省が個人情報保護のルールを定めた指針を公表、一般社団法人日本IT団体連盟が認定作業を担う体制を整えており、認定を受けると「認定事業者」として情報銀行事業を展開することができます。

個人情報を提供する代わりに対価が得られる仕組みとしては、すでにTポイントなど各種ポイントサービスがありますが、情報銀行の場合は外部提供先への情報提供の可否を利用者自らが判断でき、自らの情報をコントロールできる点が大きく異なります。

いわゆる「GAFA」が収集した個人情報を利用者本人が想定も許可もしていない分野で活用し、巨額の利益を得ていることが問題になり、個人情報濫用への不満が高まっている中、利用者本人が自身の情報をコントロールできる上に明確な対価まで受け取れるという世界でも類をみない情報銀行のサービスは、大きな注目を集めています。

内閣官房IT総合戦略室「AI・IoT時代におけるデータ活用ワーキンググループ」資料

2019年に入って事業化が活発に

2019年5月現在、まだ情報銀行として認定を受けた企業などはありませんが、2019年6月中には三井住友信託銀行やイオン傘下のフェリカポケットマーケティングなどが認定を取得する見込みで、情報銀行を利用したサービスの事業への参入を表明する企業も相次いでいます。

例えば有料放送事業を手がけるスカパーは、2019年7月から好きなスポーツチーム等の個人情報データを利用者の許可を得て外部企業に提供するサービスを開始予定。利用者は情報提供に同意すれば、案件ごとに1件あたり数百円の視聴料金割引サービスが受けられることになっています。

また、個人向け融資サービスを手がけるJスコアは、顧客の年収や学歴などをもとにAIが顧客のスコアを出し、スコア別に顧客を6グループに分類、顧客本人がスコアの外部への提供を許可すれば、現金や電子マネーといった対価や融資の際の金利引き下げなどのサービスを受けられるサービスを、早ければ2019年度末にもスタートさせたいとしています。

情報銀行普及の鍵は?

消費のオムニチャネル化が進む中、企業は顧客満足度を高めるためにユーザ1人ひとりについて深く理解し、ユーザごとにカスタマイズされたサービスの提供を求められるようになっています。これを実現するためには、顧客もしくは顧客となりうる可能性があるユーザの個人データの収集と分析が欠かせません。情報銀行は、そういった企業のニーズと、「勝手に無料で個人情報を利用してほしくない」というユーザのニーズの双方を満たす、画期的なサービスとして期待されています。しかし、情報銀行の普及拡大には、まだ課題も多く指摘されています。

課題1:認定基準が曖昧

日本IT団体連盟の認定は、情報銀行事業に必須ではなく、認定なしでも事業展開が可能。企業やユーザが安心して情報銀行のサービスを利用するためには、より厳格な認定基準や運用指針が必要ではないかという声があります。

課題2:データ保護の仕組みが不完全

日本ではデータを自由に持ち運べる権利が法規制されておらず、預けたお金を自分の意思で自由に引き出せる通常の銀行と違い、情報銀行にいったん預けた自分の情報をユーザが取り戻すことが困難。2020年に政府が提出を目指す個人情報保護改正案の原案ではデータの利用停止を企業に求めることができる「使わせない権利」は盛り込まれたものの、情報銀行内に残る個人データをどうするのかについては、今後、さらなる議論が求められます。

課題3:認知度の低さ

情報銀行の取り組みは世界でもほとんど前例がなく、日本でもまだ始まったばかりなので、その仕組やメリット・デメリットを正しく理解している人や企業がまだ少ないのが現状。情報銀行本来の安全で健全な仕組みと運用方法をいかに正しく広く周知していくかも、大きな課題となっています。

そもそも、情報銀行はデータを活用する企業側と提供する企業側が、個人データに金銭的な価値があるという認識を持っていないと成立しないサービスです。データの価値と活用のメリットを企業やユーザが正しく理解する仕組みを整えていくことが、情報銀行普及の第1歩だといえるでしょう。いずれにせよ、この夏からますます注目を集めそうな情報銀行を取り巻く状況、要チェックです!