2020年、知っておきたいインバウンドの現状

更新日 2020年12月21日

訪日外国人客数が年間3,000万人を超え、ますます好調な日本のインバウンドビジネス。東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年は訪日外国人客のさらなる増加と、インバウンド市場の拡大が予想されています。このまたとないチャンスを活かそうと、準備をすすめている企業やブランドも多いのではないでしょうか?

ビジネスで成功をおさめるには、まずは現状把握が欠かせません。今回は、インバウンドをとりまく様々なデータを整理し、そこから見えてくる課題をまとめてみまあしょう。

2019年10月、11月の訪日外国人客数は前年割れ

2015年以降好調な成長が続いていた訪日外国人客数ですが、日韓関係の悪化による韓国人客数の減少に伴い、2019年10月と11月は2ヶ月連続で前年割れを記録しました(10月:249万6,600人、11月:244万1,300人)。しかし、減少しているのは韓国人客のみで、韓国を除く 19 市場からの訪問客数は(中国、台湾、香港、タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム、インド、豪州、米国、カナダ、英国、フランス、ドイツ、イタリア、ロシア、スペイン)については、11月として過去最高を記録するなど堅調な伸びを示しています。2019年11月の訪日外国人客の国別の内訳は以下のグラフのとおりです。

出典:日本政府観光局プレスリリース

このうち、特に大きく伸びたのがタイからの観光客で前年同月比 36.3%増の 14万300 人と、11 月として過去最高を記録。背景にはバンコク-新千歳線や仙台線等の新規就航や増便による航空座席供給量増加に加え、継続的に展開してきた広告プロモーションの結果があると分析されています。

中国市場の伸びも堅調で、前年同月比 21.7%増の 75万900 人と、同じく11 月として過去最高を記録。夏ダイヤと比較して 200 便以上となる大幅な増便や、新規就航により航空座席供給量が増加したことに加え、1 月から開始した個人査証(ビザ)の発給要件緩和の効果があったものと考えられます。

ラグビーワールドカップの影響でイギリスやオーストラリアからの訪日客数も前年を大きく上回ったものの、訪日外国人客の63%は東アジア(韓国、中国、台湾、香港)からであり、依然として訪日外国人客の国籍に偏りがあることがわかります。

最もお金を使っているのは、どこの国の人?

では、日本を訪れた外国人客たちは何にどのくらいお金を使っているのでしょうか?観光庁の調査によると、2019年7~9月期の訪日外国人旅行消費額は推計1兆2,000億円(前年同期比9.0%増)。国籍・地域別では、中国が5,051億円(構成比42.1%)と最も大きく、次いで台湾、1,386億円(同11.6%)、韓国915億円(同7.6%)、香港855億円(同7.1%)、米国788億円(同6.6%)の順となっています。

出典:観光庁プレスリリース

続いて、消費の内訳を見てみましょう。同じく、観光庁の調査によると、外国人訪日客の支出費目別に訪日外国人旅行消費額の構成比をみると、買物代が33.0%と最も多く、次いで宿泊費(30.1%)、飲食費(22.1%)の順でとなっています。

ここまでのデータを見ると、中国人のいわゆる「爆買い」を想像してしまいますが、消費を牽引しているのは決して中国人だけではありません。中国人の支出総額が大きいのは、訪日中国人数が多いからであって、1人あたりの消費額はトップではないのです。

では、1人あたりの消費額が大きいのは、どの国からの訪日客なのでしょうか?

観光庁が2019年に行った調査では、1人あたりの消費額が多いのはフランス(25万2,000円)、スペイン(22万7,000円)、オーストラリア(21万5,000円)の順。中国の1人あたりの消費額は20万9,168円で、前年を4.9%下回っています。ただし、消費額の内訳を見ると、「買い物」に使った金額が最も多いのは、依然として中国人(1人あたり9万4,446円)。消費総額がトップだったフランス人は、宿泊代に最も多くのお金を使っており(1人あたり10万6,308円)、スペイン人は1人あたりの「娯楽・サービス費」への支出が最も多い(1万7,008円)ことがわかりました。お金をかけるポイントにもお国柄が出るということでしょうか。

満足度が高い買い物は「菓子類」、飲食は「肉料理」

続いて、訪日客の買い物事情をクローズアップしてみましょう。まず、彼らはどこで買い物を楽しんでいるのでしょうか?三井住友銀行が行った調査「訪日外国人旅行者(インバウンド)の動向」(2019年6月)によると、「買い物をした場所」に関する調査では、2012年と2018年で以下のような変化が見られました。2012年にはスーパーやショッピングセンターで買い物をする人が多かったのに対して、2018年ではコンビニエンスストアや空港免税店といったアクセス面で利便性が高い店舗や、目的買いが中心とみられるドラッグストアや百貨店で、6割超の旅行者が買物を行っています。

出典:三井住友銀行「訪日外国人旅行者(インバウンド)の動向」

次に、外国人の皆さんはどんなものを買ったり食べたりしているのかを知るヒントとして、同じく三井住友銀行のリポート「訪日外国人旅行者(インバウンド)の動向」のうち、「満足した買い物」「満足した飲食」に関する調査をみてみましょう。

調査によると、2018年に外国人が日本で買ったもののうち、もっとも満足度が高かったのは「菓子類」で、次いで「化粧品・香水」「衣類」「医薬品」の順となっています。飲食で最も満足度が高かったのは意外にも「肉料理」で、次いで「ラーメン」「寿司」「魚料理」でした。

気になる「情報源」は?

では外国人旅行客は、日本を旅するにあたって必要な情報を、どのようにして集めているのでしょうか?三井住友銀行のリポートによると、「役に立った情報源」として最も回答が多かったのは「個人のブログ」(30.6%)、次いでSNS(23.7%)、自国の親族・知人(17.6%)、口コミサイト(15.3%)で、旅行前の情報収集手段として、個人のブログやSNSなど、インターネット上で得られる個人の口コミを重視する傾向が強まっていることがわかります。

出典:三井住友銀行「訪日外国人旅行者(インバウンド)の動向」

以上、インバウンドを取り巻く興味深いデータをいくつかご紹介しました。以前はインバウンドというと誰もが頭に思い浮かべたのは中国人の爆買でしたが、各データを見ていると、今では国籍も旅の目的や購買動向も多様化が進み、「訪日外国人」という言葉でひとくくりにするのが難しくなっていることがわかります。インバウンドマーケットで成功をおさめるためには、自社がターゲットとする外国人の属性を見極め、彼らの情報収集~購買に至るまでの行動に関するデータをしっかりと分析する必要がありそうです。