年間発行額1兆円超!加熱するポイ活市場 ~消費者意識は「どこで買うか」よりも「どう買うか」へシフト

値上げラッシュ、ポイント還元に注目 

食費やガソリン、光熱費など幅広い分野で値上げが相次ぐ中、お得な情報を探し、ポイントを効率良く貯める「ポイ活」の人気が上昇しています。 

ポイントを貯める方法は、主に①購入額に応じてポイントを付与、②アンケートへの回答など何らかのミッションを遂行後にポイントを付与の2種類。最近は自社サイトやアプリでのポイント付与を行うだけでなく、ポイ活専用のアプリやサイトに広告を出し、ポイント還元をキーワードにユーザー登録や商品の購入を促す企業も増えています。ユーザーはポイントを獲得でき、企業は売り上げやユーザーの情報を獲得できるポイ活は、ユーザーと企業を繋ぐ接点として、ますます存在感を増しつつあるのです。 

たとえば、クレジットカードA社の場合、カード新規発行の際に通常は5000ポイントを付与しているところ、ポイントサイトの「モッピー」を経由して発行すると期間限定で1万1000ポイントが付与されるキャンペーンが実施されています。こういった特別な機会を見逃さないように、ポイントサイトやアプリに登録をする人が増えているのです。 

拡大を続けるポイ活市場。効果低減への懸念も 

野村総研の調査によると、2020年に家電量販店やキャッシュレス決済、携帯電話など、国内11業界の主要企業が1年間に発行するポイント・マイレージの発行量を金額換算した年間最少発行額は、約1兆399億円。新型コロナウイルス感染拡大の影響で航空・旅行・外食業界のポイント発行量が激減したことを受けて前年度を下回りましたが、野村総研では今後、コロナによる制限緩和が進むにつれポイント発行量も回復し、2025年度には民間のポイント年間発行額は1兆3,000億円を突破すると見込んでいます。 

ポイントを発行しているのは民間企業だけではありません。キャッシュレスポイント還元事業やマイナポイント事業、Go To Eatなど行政が主体となって発行されるポイントも、年々増え続けており、発行額は2019年度と2020年度の累計で約7000億円を越えました。 

しかし、官民あげてのポイント大増発が続く中、ポイント発行による効果低減を指摘する調査結果も出てきています。野村総研が2022年1月に公表した調査で、「普段商品やサービスを購入する際に、集めているポイントが付与されるかどうかで、購入する店舗や企業は変わりますか」と聞いたところ、「変わる」と回答した人は全体の15.3%で、2019年の23.7%を下回りました。野村総研ではその背景について「QRコード決済陣営によるポイント大増発+キャッシュレス消費者還元事業やマイナポイント事業によって、消費者のポイントに関する意識は〝どこで買うかからどの支払手段で買うかへと意識がシフトしている」と分析、「今後は購買に伴うポイント付与(特に通常ポイント)の影響力は、一層低下する可能性がある」と予測しています。確かに、たとえばPayPayのポイントを貯めている場合、PayPayが使える店舗ならどこで購入しても同じようにポイントが貯まるわけですから、店舗選びにこだわる必要はなくなります逆に言うと店舗・企業側にとっては、これまで以上にポイント活用についての創意工夫が求められるようになっているということです 

具体的には

  • 自社運営のポイントプログラム以外にTポイントや楽天ポイントといった共通プログラムを複数用意し、 
  • 消費者がより柔軟にポイントプログラムを選べるようにする 
  • 複数の決済方法を用意する 
  • ポイント付与時だけでなくアプリ等を通じて日常生活の中での顧客との接点を増やす 
  • など、顧客の買い物体験向上につながる戦略が必要になるでしょう。 

新型コロナウイルスの感染が落ち着きを見せ始め、旅行や外食などの需要が戻りつつある一方で、食料品・日用品の値上げに備えて家計の引き締めを図るなど、メリハリのある消費行動が目立つ今こそ、マーケティング戦略における「ポイント」の在り方を見直してみてはいかがでしょうか。