高まる広告におけるジェンダーを求める声~改めて考えたい、企業広告に求められる「3つのP」とは

広告の素材として活用されることも多いストックフォト。言うまでもなく、広告における写真は消費者の購買意欲やエンゲージメントに大きな影響を及ぼす重要なコンテンツですが、皆さんは自社広告にストックフォトを使う際、何を基準に選んでいますか?

世界最大級のストックフォトサイトiStockを運営するゲッティイメージズが2022年3月に発表した調査では、日本人のストックフォト選びには、ジェンダーについて顕著な傾向が見られることがわかりました。

日本に根深いステレオタイプ 子育て=女性

iStock内で人気の高いビジュアルのうち、日本では「子育てをしている女性」のビジュアルが、男性のビジュアルよりも2倍多く選ばれています。

世界的には「子育てをしている」女性が選ばれる確率は男性の1.36倍。日本は世界的な水準と比較しても高い傾向にあり、「子育て=女性」というステレオタイプがいまだ根深いことが浮き彫りになりました。

同時に、女性のビジュアルは、以下のような場面で男性よりも多く登場していることが明らかに。家庭・職場を問わず、女性が何らかのケアやサービスの役割を担う姿として描かれることが多いようです。

<男性より女性がよく登場する場面>
  • 家事:男性より女性が112%多い
  • 掃除:男性より女性が129%多い
  • 在宅勤務と子育て:男性より女性が51%多い。
  • ホームスクーリング:男性より女性が131%多い。
  • サービス業:男性より女性が123%多い

では、広告内で描かれる女性には、どんな特徴があるのでしょうか?

ゲッティイメージズによるとiStockで人気の高い女性のビジュアルは「若くてスリムで、異性愛者、障害がない女性」のビジュアルであり、その実態は以下のような数字に表れています。

  • 人気ビジュアルに登場する女性の約半数は若年層または30歳未満(53%)
  • LGBTQ+の女性が登場するビジュアルは1%未満
  • 障害を持つ女性が登場するビジュアルはわずか1%のみ
  • 大きい体型の女性が登場するビジュアルは1%未満

ジェンダーステレオタイプの見直しを迫る声が多数

こういった広告の中で描かれるジェンダーステレオタイプについて、広告を見る消費者はどのように感じているのでしょうか?

ゲッティイメージズの調査では、ほぼすべての国の女性が「広告に自分が共感できる人が十分に表現されていない」と回答しています。

また、世界70か国以上で活動するNGOプラン・インターナショナルの調査でも、「今まで目にした広告で不快感や違和感を覚えたことがある」と答えた人は、全体の41.8%にのぼり、違和感を覚えた広告の特長として次のような要素が挙げられました。

  • ジェンダーの役割を押し付けている(男性は仕事、女性は家事)
  • 女性を性的対象として描いている
  • 容姿に関する押し付け(画一化された美を押し付けられている)
  • ジェンダーに基づく差別
  • LGBTについての配慮がない

また、この調査では女性だけでなく、男性へのステレオタイプへの問題意識も浮き彫りに。回答者からは、次のような意見が寄せられました。

  • 男らしい、女らしいというのが誇張された広告が多い(大学生、女性)
  • 家事で疲れた、育児で疲れたと描く時は女性が多く、反対に仕事の疲れを描く時は男性が多い(社会人、女性)
  • 体格の違いがはっきり出るようなモデルさんを選んでいる(高校生、女性)
  • 食器用洗剤のCMは主婦、ビールのCMは男性サラリーマンというように広告の種類によって出る役者の性別がほぼ固

定化されている(高校生、女性)

  • 広告は、このまま男尊女卑を加速させることも、社会を変えることもできる存在だと思う。だからこそ社会にどういう影響を与えるかまで考えて制作してほしい(大学生、女性)
  • 特に仕事について、男性と女性の役割の壁を壊すような広告がいいと思う(高校生、女性)
  • ジェンダーに対するさまざまな価値観を取り入れた広告が増えて欲しい(大学生、女性)
  • LGBTの存在を認識してほしい(大学生、女性)
  • 子どもたちがジェンダーにとらわれずに生きていけるようになればいいと思う(社会人、女性)
  • 多様な人々の事情を加味したさまざまなCMがあるべきだと思う(大学生、男性)

企業やブランドに求められている、3つのP

では、こういった声を、企業やブランドはどう受け止めれば良いのでしょうか?

最初に紹介したゲッティイメージズの調査では、女性の82%が、「社会は伝統的な性別による役割分担を強制すべきではない」と回答。「ダイバーシティに積極的に取り組んでいると思う企業だ」と評価する理由としては、以下が多く挙げられました。

  • 広告やコミュニケーションにおいて、一貫して幅広い人々、ライフスタイルまたは文化を表現している:45%
  • ダイバーシティやインクルージョンに関する問題について発信している:39%
  • 広告やコミュニケーションにおいて、様々な人々やライフスタイル、文化を正確かつ真正面から表現している:38%

調査結果を受けてゲッティイメージズでは、「世界中の女性が、多角的な視点で多様性を受け入れ、平等を重んじている時代において、企業にも同じ姿勢を求めていることが分かる」と分析しています。

折しも日本では、今年4月、日本経済新聞が朝刊の全面広告に、漫画『月曜日のたわわ』の宣伝のため、胸の大きさを強調したミニスカート姿の女子高生のイラストを掲載したことに抗議の声が上がり、いわゆる「炎上」状態に。UN Women(国連女性機関)の本部(米・ニューヨーク)が日経新聞に対して、今回の全面広告を「容認できない」と抗議する書面を送付し、広告の掲載の可否を決めるプロセスの見直しなどを求める騒動にまで発展。企業広告におけるジェンダーの取扱いが、企業やブランドイメージにいかに大きな影響を及ぼすのかを世に知らしめる結果となりました。

UN Womenでは、広告からステレオタイプを取り除くため、「3つのP」という審査項目を設けています。
  • Presence 多様な人々が含まれているか
  • Perspective 男性と女性の視点を平等に取り上げているか
  • Personality 人格や主体性がある存在として描かれているか

各企業やブランドには、意図せぬジェンダーの押し付けが企業イメージを損なうことのないよう、上記3Pに照らして自社広告を見直す、あるいはガイドラインを策定するなどの取り組みが、今後ますます強く求められるようになるものと考えられます。