NRF 2024~リテール業界、世界の最新潮流を知ろう(後編)

2014年1月14日~16日までアメリカ・ニューヨークで開催されたNRF(全米小売業協会)による世界最大級のリテールカンファレンス「NRF 2024:Retail’s Big Show」。今回のブログでは前回に引き続き、今年のNRFで注目を集めたキーワードを紹介していきます。

データは「金」なり。リテールメディアへの注目が高まる

2024年はGoogleによるサードパーティー・クッキーの廃止が予定されていることもあり、今年のNRFではリテーラーが収集・所有するファーストパーティー・データの価値が、これまで以上に大きくクローズアップされました。サードパーティー・クッキーによるターゲティングができなくなるポストクッキー時代において、ファーストパーティー・データを効果的に収集、分析、活用できる小売企業は、顧客行動の理解、在庫管理の最適化、マーケティング・キャンペーンのターゲティングにおいて、非常に大きなアドバンテージを持つことになります。

特に昨今、新たな広告配信プラットフォームとして世界的に市場を拡大している「リテールメディア」事業に参入する小売業者にとって、自社ECサイトや店舗で収集するユーザーのファーストパーティー・データは、何よりの財産です。リテールメディアに出向する広告主は小売業者のファーストパーティー・データを活用することで、サードパーティー・クッキーを使うことなく、自社製品やサービスに関連性の高い顧客に的を絞ってリーチすることが可能になります。広告枠が売れれば売れるほど、小売業者には広告収入が入ることになるため、「リテールメディア」は、企業規模拡大の起爆剤となる新規事業として大きな注目を集めているのです。。例えば米小売り大手のウォルマートでは、2022年のリテールメディア事業「ウォルマートコネクト」による売り上げは、前年比+900億円も増えて、27億ドル(4050億円)に達しています。さらに注目すべきは、その利益率の高さ。リテールメディア事業の利益率は本業である小売事業よりもはるかに高く、取り組み方によっては70~90%の利益率を実現することも可能と言われています。

このように小売業者にとって非常に魅力的なリテールメディア事業ですが、すでに成熟期を迎えつつあるアメリカでは、その評価を図る共通指標の必要性が指摘されています。現状、アメリカにはリテールメディアの効果を図る客観的かつ共通の指標がないため、リテールメディア間の効果について媒体(小売業者)を横断して比較検討ができない状況にあります。今後、業界団体などによって一定の指標が整備されれば、媒体ごとの効果が可視化されることになり、それが濫立しつつあるリテールメディアの淘汰に繋がっていくのかもしれません。

顧客に一つの声で語りかける

NRF期間中、最も注目を集めたセッションの1つが大手百貨店メイシーズでカスタマージャーニー・シニアバイスプレジデントを務めるベネット・フォックス=グラスマン氏によるセッションです。グラスマン氏はハイパーパーソナライズされたコネクテッドジャーニーを通じて、同百貨店がどのように顧客体験を刷新しているかについて詳しく説明、具体的に以下のような取り組みに注目していることを明かしました。

  • 初回購入者のリピーター化を促進
  • オンラインショッピング利用者の店舗への誘導
  • 店舗利用者のオンラインへの誘導
  • 自社クレジットカードの利用率向上
  • 高額購入者の定着

「なんだ、意外と普通のことじゃない?」と思った方も多いかもしれません。この点についてグラスマン氏は「これまでは、これらの取り組みを個別の戦略として行ってきたが、今後は、顧客のためにすべてを統合する。中断したところからいつでも再開できる『会話』と同じように、いったんメイシーズと関係が途切れた顧客といつでも関係性を再開できるようにすることが大切だ。メルマガやアプリで繋がっている顧客、実店舗を利用する顧客、広告を見ている顧客など、全ての顧客にメイシーズは『一つの声』で話しかけることを大切にしていく」と述べています。消費者がオンライン・オフラインのチャネルを超えてシームレスに買い物をするのが当たり前の時代、「実店舗の客」、「オンラインの客」と色分けして別々の施策を展開するのではなく、オムニチャネルで一貫して揺るぎのないメッセージを伝え続ける。そして、全ての顧客にパーソナライズされた広告を届け、快適な買い物体験を提供することにとって顧客をファン化する。AIとデータを駆使したメイシーズの取り組みが、今後どのような成果を見せるのか注目が集まりそうです。

このメイシーズの取り組みにも欠かせないのが、今年のNRFのキーワードとなったAIとデータの利活用。物価高や少子高齢化、労働者不足など様々な課題に直面する日本の小売業界にとって、決して避けては通れない課題でもあります。CriteoではこういったAIの可能性にいち早く着目、2018年には自社のAI研究所を設立、AI技術に関する研究を続けており、その結果を様々なソリューションに活用しています。生成AIやデータの利活用、リテールメディアについてご興味のある方は、ぜひcriteoにご相談ください。御社のビジネスにとって最適なソリューションをCriteoとともに考えていきましょう。

お問い合わせはこちらから