インバウンド回帰、訪日外国人に人気の旅先、お土産は? 帰国後も外国人客と繋がり続けるには?

2022年10月11日から、日本では入国者数上限の撤廃、個人旅行客の受け入れ再開、68の国・地域からの短期滞在者へのビザ免除の開始など、大幅な水際対策の緩和が実施されました。コロナ禍には閑散としていた各地の観光地にも外国人観光客の姿が戻り、落ち込んでいたインバウンド消費の回復にも期待が寄せられています。

折しも秋の旅行シーズンですが、日本を訪れた外国人観光客は、どこで何をしているのでしょうか?また、訪日外国人をECで呼び戻せる可能性はどのくらいあるのでしょうか。各社のリサーチ結果から読み取っていきましょう。

訪日外国人が好む旅先は?

まずは、外国人に人気の観光地はどこなのか、最新のデータを見ていきましょう。ナビタイムジャパンが提供するナビゲーションサービス『Japan Travel by NAVITIME』によると、9月22日に10月以降の水際対策大幅緩和の方針が発表されて以降、日本国外からの利用者数が急増、10月末の利用者数は9月初旬の約4.5倍まで達しており、訪日旅行への需要の高まりを見て取ることができます。アプリの設定言語別に利用者数の変化をみると、9月1日を基準にした伸び率では、中国語(繁体字)が最も高く、利用者数は2022年10月30日時点で9月1日の22.9倍に。韓国語、タイ語利用者も、それぞれ7.8倍、5.9倍の伸びが見られ、台湾、香港、韓国、タイでの訪日旅行への関心の高まりを伺うことができます。

出典: 株式会社ナビタイムジャパンプレスリリース

中国語圏の人には雪・温泉・富士山が人気

伸び率の大きかった3言語について、目的地に設定された都道府県とスポットを分析したところ、中国語(繁体字)利用者は、全体の傾向として、これからの冬シーズンにスキーもできる北海道、長野、青森などの降雪地、九州の温泉地として人気の大分、熊本の他、山梨、和歌山でも全体の傾向として順位が高い傾向がありました。

また、具体的な目的地では、河口湖や軽井沢、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの最寄り駅であるユニバーサルシティ、函館、銀座、札幌の順位が高いのが特徴的でした。

タイ人は地方を好む傾向に

タイ語利用者について見てみると、福岡、北海道、大分、山形の順位が高い傾向にあり、東京の占める割合が25.2%と、全体の検索割合の31.8%よりも低くなっているのが特徴的です。雪の降らない国だけに、やはり北海道や山形など雪の降る地域へのあこがれが強いのかもしれません。また、スポット別では由布院、熊本の順位が高いのが特徴で、温泉を楽しみたい旅行客が多いことを伺うことができます。

韓国人旅行者は都会が好き?

韓国語利用者では、上位2都府の東京、大阪を足すと約6割を占め、東京、大阪を目的地にした検索の偏りが大きいことがわかります。北海道、大分などで、全体の傾向よりも検索順位が高くなっています。具体的な目的地では、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン、東京ディズニーランドといったテーマパークが上位であること、銀座、秋葉原、原宿、新大久保やなんば、道頓堀など東京、大阪で人気の場所への検索が多いことも特徴的でした。

平均旅行支出は1人当たり31万3,000円に

インバウンドの外国人といえば、「爆買い」がおなじみですが、この秋は円安の追い風もあって、爆買いがさらに加速するものと見られています。観光庁が毎月発表している「訪日外国人1人当たり旅行支出」の推移を見てみると、2022年4~6月は25万7193人だったのに対し、7~9月は31万3000円と、6万円以上増えています。これに伴い、訪日外国人旅行消費額も、4~6月は1047億円だったのに対し、7~9月は1631億円と約600億円も伸びています。今後も順調に訪日外国人が増え続ければ、インバウンドによる経済効果はますます大きくなると期待されています。

では、訪日外国人たちは、日本でどのように過ごしているのでしょうか?

同じく官公庁の「訪日外国人消費動向調査」(2019年)によると、外国人の消費で最も多いのは「買い物代」で約34.7%、次いで宿泊費が29.4%、飲食費が21.6%でした。つまり、滞在中の支出のうち半数以上を買い物と飲食が占めていることがわかります。円安でお買い得になった商品を爆買いし、世界的に見ても飲食店での料理の価格が安いといわれる日本で美食に舌鼓。そんな外国人たちの旅の様子が目に浮かびます。

出典: 観光庁「訪日外国人消費動向調査2019」

続いて外国人たちは、日本旅行中に何を買い、何を食べているのか、見ていきましょう。

同調査によると、外国人が日本で土産用に購入したもののうち、最も多かったのが「菓子類」で69.5%、「化粧品・香水」で42.2%、「その他食糧品・飲料・タバコ」で38.0%。一人当たりの平均購入額が最も高かったのは「時計・カメラ」で、約5.7万円でした。買い物した場所で最も多かったのは、「コンビニエンスストア」で73.9%、次いで「空港の免税店」59.8%、「ドラッグストア」59.5%と続きました。

ちなみに、決済方法としては意外にも「現金」が最も多く95.7%、次いでクレジットカード59.5%、モバイル決済20.1%という結果でした。

なお、飲食についての同調査では、日本で食べた食事メニューのうち、最も満足度が高かったのが「肉料理」で26.7%、次いで「ラーメン」19.3%、「寿司」15.6%の順でした。

「事前情報はSNSで」が常識に

では、こういった日本旅行に関する情報を、外国人はどうやって事前にリサーチしているのでしょうか?

株式会社CARTA COMMUNICATIONSが、2022年からの外国人の新規入国制限の見直しを背景に、日本をよく訪れていた4か国(アメリカ、オーストラリア、シンガポール、タイ)を対象に行った調査で、日本に関する情報源について聞いたところ、最も多かったのがYouTubeで65%、次いでFacebookが57%、Instagramが47%と、動画やSNSの投稿から情報を得る人が多く、同社では訪日目的として「文化体験」を挙げた人が多い(30.5%)ことを挙げ、「グローバルプラットフォームを通じて提供される日本の情報が、音楽映画、芸術、芸能鑑賞などの無形文化財への興味・関心に繋がっている」と分析しています。

環境への配慮が購入の決め手に

また、同調査で商品を購入する際の決め手として「地球環境への負荷が低い商品を買うようにしている」と回答した人が90.5%、「他の商品より高くても買う」と回答した人が69%もいたことにも、要注目です。一方、「日本のブランド製品は、製造・販売時にサステナビリティに配慮していると思う」と回答した外国人は60%にとどまっています。環境に配慮した商品・サービスを用意し、それを外国人にもわかるように伝えることが、外国人に選ばれるブランドになるための重要な要素になるのかもしれません。

訪日外国人客の口コミで集客し、帰国後はECで呼び戻す

また、みずほ情報総研が2016年に行った調査「訪日外国人の再購入に関する調査」では、日本で買った商品や買い物をした店舗については、様々な観点から情報が発信されていることがわかっています。インバウンド観光客の80%前後の人が、商品や店舗についてインターネットでの書き込みや友人や親族と会話をして情報を発信しており、話題にする内容で最も多いのは「買った商品の品質について」で88.0%、次いで「買った商品の値段」が86.5%、「買い物をした店舗の品揃え」が84.8%、「買い物をした店舗の店員の接客」が84.5%と続き、さらに「買い物をした店舗の立地・アクセス」84.2%なども話題にしています。

そして全体の60%が日本旅行中に買ったアイテムを再度購入していることも明らかに。帰国後に買った割合が最も多かったのは「菓子類」(71.3%)、次いで「トイレタリー/その他の日用品」(71.9%)、「化粧品・香水」(71.1%)、「マンガ・アニメ・キャラクター関連商品」(71.0%)、「その他食料・飲料品」(69.9%)、「衣類・かばん・靴(和服・草履等の日本の伝統品以外)」(69.3%)、「電気製品(PC、音響機器、炊飯器、温水便座など)」(68.1%)と続いています。

入手チャネル別では、「電気製品」「衣類・鞄・靴」「トイレタリー/その他日用品」は、越境ECを利用して購入される割合が高く、後日、「日本に旅行に行った友人・親族に買ってきてもらった」という人も一定の割合で存在しています。

本調査の結果から、みずほ銀行では「多くの訪日外国人が、訪日中に購入した商品に対して『帰国後に再度買いたい』という感情的なロイヤルティを持ち、さらに「実際に再度入手した」という行動的なロイヤルティも現れていることがわかった」と分析。帰国後の再購買を促進するためには、「訪日中の買い物満足や、訪日前の情報収集行動といった感情的ロイヤルティに影響を与える要素への対策を講じるとともに、越境EC対策現地での商品価格や品揃えなどの行動的なロイヤルティの障害となる事象を取り除くことが必要」と指摘しています。

デジタルで世界中の顧客と容易に繋がることができる今の時代、外国人客に対しても「売って終わり」の姿勢では通用しません。彼らの口コミが新たな客を呼ぶこと、そして彼ら自身がまたECの利用を通じて「お得意様」になる大きな可能性を秘めていることを理解することが大切です。帰国後も記憶に残る、より良い商品・サービスの提供、そして英語版ECサイトの整備などをすすめ、インバウンドの再来をビジネスの成長に繋げましょう。