実店舗vs.オンラインショッピング:年末商戦と2021年に向けたトレンドと戦略

COVID-19がもたらしたパンデミックによるEコマースの加速に伴い、オムニチャネルの重要性が大きくクローズアップされています。小売業者の多くは、これまで以上にデジタルに注力し、オフラインとオンラインのデータ連動の重要性を再認識しています。1年を通じて最も売上が期待できる季節、特に今年はEコマースが史上最大の盛り上がりを見せるであろう季節が始まる前に、消費者が快適にショッピングを楽しめるチャネルを整備することが、すべての小売業者にとっての最重要課題です。

今年の年末商戦期間中、小売店は営業自粛を余儀なくされるか、通常営業を再開するか、もしくは一定の制限下での営業となる可能性があり、状況に応じて消費者の「快適さ」のレベルが変わってきます。今年の状況は確かに例年とは異なりますが、昨年の経験を振り返ることによって、オムニチャネル戦略に有効なインサイトが得られるはずです。

Criteoでは、年末商戦中に売上のピークがオンライン・実店舗間でどう切り替わっていくのかを把握するために、提携する数万の小売業者から得た2019年の売上データを分析しました。今年の実店舗での販売は、クリック&コレクトの比重が圧倒的に大きくなりそうですが、Criteoでは、配送料の負担や配達の遅延、駆け込み需要などの影響で、シーズン後半には実店舗で買い物をする客が増えると見込んでいます。

それでは、オムニチャネルの小売業者は店舗での販売に合わせて、いつ頃からキャンペーンの最適化に着手すればいいのでしょうか。まずは、昨年の動きを振り返ってみましょう。

ほとんどの商品カテゴリーにおいて、店舗の売上がオンラインの売上を上回るのは、サイバーマンデーの直後

アメリカでは昨年、ほぼすべての商品カテゴリーにおいて、店舗販売がオンライン販売を上回る変曲点は、ブラックフライデーとサイバーマンデーの期間中あるいはその直後に見られました。ただし、衣類やアクセサリーのカテゴリーは例外で、12月8日にオンラインと実店舗の売上が入れ替わりました。靴とアクセサリーはさらに遅く、店舗での売上がオンラインを上回ったのは、12月15日でした。

12月は、実店舗での販売が順調に伸びています。クリスマスの数日前になると、衣料品の店舗販売は9月に比べて100%近く増加、電子機器は236%増、ジュエリーは300%増、おもちゃなどの子ども用品は644%も激増しました。

出典:2019年9月の初日から4週間の売上平均に基づく指標値、小売販売全般、米国、Criteoのデータ。

出典:2019年9月の初日から4週間の売上平均に基づく指標値、小売販売全般、欧州、Criteoのデータ。

欧州では、2019年に店舗販売がオンライン販売を上回ったタイミングについて、商品カテゴリー間での一貫性はほぼ見られませんでした。ブラックフライデー、サイバーマンデーの直前またはその期間中に入れ替わったカテゴリーもあれば、直後に入れ替わったカテゴリーもあります。

オンラインと実店舗のどちらにおいても、多くの商品カテゴリーでブラックフライデー、サイバーマンデーの週末に売上のピークを迎えています。たとえば、アクセサリーなどの装飾品の店舗販売は、サイバーマンデー当日に309%増を記録しました。電子機器製品の売上はどちらもブラックフライデーにピークに達し、オンラインでは132%増、実店舗では83%増となっています。

またCriteoでは、2019年12月はクリスマスが近づくにつれて売上が継続的に増えている点だけでなく、グラフが丸みを帯びてきていることにも注目しました。これはおそらく、欧州では米国と比べて計画的に買い物をする人が多く、直前になって買い物をする人が少ないことによるものと考えられます。

出典:2019年9月の初日から4週間の売上平均に基づく指標値、小売販売全般、欧州、Criteoのデータ。

出典:2019年9月の初日から4週間の売上平均に基づく指標値、小売販売全般、欧州、Criteoのデータ。

ホーム&ガーデン用品(12月15日に139%増)、ジュエリー(12月22日に99%増)、ペット用品(12月15日に69%増)、子ども用品(12月22日に126%増)は、12月中を通じて店舗販売がオンライン販売をはるかに上回る売上を示しています。

出典:2019年9月の初日から4週間の売上平均に基づく指標値、小売販売全般、欧州、Criteoのデータ。

出典:2019年9月の初日から4週間の売上平均に基づく指標値、小売販売全般、欧州、Criteoのデータ。

ハロウィン後にデコレーションとパーティー用品の店舗販売が上昇開始

米国ではハロウィンが終わるとすぐに、年末年始の休暇を自宅で過ごすための準備を始めるようです。このグラフを見ると、室内の装飾品の売上は11月初旬にはすでに66%も増えていることがわかります。欧州では上昇までにもう少し時間がかかっていますが、それでもブラックフライデーの前には準備を始める人が多いらしく、11月中旬にはパーティーや祝日関連の売上が53%も増加しています。

出典:2019年9月の初日から4週間の売上平均に基づく指標値、小売販売全般、米国、Criteoのデータ。

出典:2019年9月の初日から4週間の売上平均に基づく指標値、小売販売全般、欧州、Criteoのデータ。 

2019年は家具(米国)と衣料品(欧州)の店舗販売が低迷

アメリカでは昨年、ホリデーシーズン全体を通じて店舗での家具の売上が落ち込みました。欧州では、衣料品の店舗販売で横ばいが続き、クリスマス直前にごくわずかだけ増加しています。ブラックフライデーは小売業者にとって、こうした店舗の売上低迷を挽回する絶好のチャンスです。

出典:2019年9月の初日から4週間の売上平均に基づく指標値、小売販売全般、米国、Criteoのデータ。

出典:2019年9月の初日から4週間の売上平均に基づく指標値、小売販売全般、欧州、Criteoのデータ。

2020年のホリデーシーズンとそれ以降にも目を向けたオムニチャネル戦略

世界中でCOVID19による影響は目まぐるしく変化し、ホリデーシーズンのショッピングを取り巻く状況も地域によってさまざまです。マーケターはあらゆる可能性に備えるため、新たな環境に合わせて実店舗を最適化しようとしています。

Criteoがこの10月に実施した米国のマーケティング担当者を対象としたアンケートによると、61%がすでに非接触型の会計システムを導入し、53%がクリック&コレクト/カーブサイドピックアップ・サービス(ネットで注文し、実店舗の駐車場で受け取る)の提供を開始しています。また、まだ導入していないと回答した37%も、今シーズン中にはクリック&コレクトを利用できるようにする予定だと回答しています。

マーケターの多くは、今年のホリデーシーズン中に、たとえば予約ベースの販売(33%)やバーチャル試着(40%)といった、オンラインとオフラインを融合した新サービスの導入を計画していると回答しました。1 この傾向は、2021年以降もしばらく続くものと考えられます。

小売業者がこういったサービス体験を最適化させ、ホリデーシーズン以降も売上の維持・拡大を図るためには、オンラインとオフラインのデータを連動させ、適切なタイミング・適切なチャネルで販売を促進していかねばなりません。ここでは、それを実現するための方法を3つご紹介しましょう。

  • 消費者の足を実店舗へ

Criteoが2020年8月に実施したホリデーシーズンおよび年末商戦のトレンド調査によると、米国、英国、フランス、ドイツの3分の1以上の買い物客が、「実店舗でプレゼントを探す予定だ」と回答しています。2

店舗営業が可能な場合は、通常営業・短縮営業に関わらず、売上や滞在時間などのデータを活用して、デジタル広告を最適化し、実店舗での成果の拡大(客足増、売上増)を目指しましょう。

  • 実店舗からウェブサイト

実店舗ではまだ快適にショッピングを楽しめないという消費者や営業再開が制限されている地域については、店舗や顧客、その他のオフラインデータを活用してECサイトに誘導しましょう。ブラックフライデー、サイバーマンデーに先駆けて消費者の関心を惹きつけるために、今すぐキャンペーンを強化しましょう。

  • 実店舗とカーブサイドピックアップ(ネットで注文し、実店舗の駐車場で受け取る)のプロモーション

Signifydの調査では、BOPIS(オンラインで注文した商品を店舗で受け取る)による注文数が、2020年6月に全世界で2倍以上に増えたことが明らかになりました。これが、消費者が年末年始にどこで購入するかを決める上での大きな判断材料になることは間違いありません。

12月が近づくにつれ、配達の遅れを不安に思う消費者は、より迅速かつ確実なショッピングの手段を探し始めます。データを活用してクリック&コレクトを利用したい消費者を見つけ出し、実店舗やカーブサイドピックアップを宣伝しましょう。

2021年に注目すべきオムニチャネルリテールのトレンド

今年起きた消費者行動の変化は、画面上だけの話ではなく、小売業界を根底から覆すほどの大きな変化であることは、すでに皆さんもご存知のとおりです。新鮮で希望に満ちた思いで2021年に臨めるように、今後しばらくは続くであろうトレンドについて、確認しておきましょう。

今後も続くクリック&コレクトのニーズ

CommerceHubの調査では、消費者の67%が「パンデミック後もカーブサイドピックアップの利用を継続する」と回答しています。3 トレンドを把握し、データを分析して消費者のニーズを確実に理解することが、適切な商品の在庫を確保して顧客満足度を維持するためのカギとなります。

高まるビジュアルストーリーテリングの重要性

動画広告、コネクテッドTV広告、ショッピング機能が付いた動画サイト、360度の商品ビュー、インフルエンサーによる動画のライブストリーム配信といった、新たなビジュアルコマースが2021年以降も注目すべきトレンドになると予測されます。広告キャンペーンからウェブサイト、アプリ、店舗に至るまで、動画のパワーを活かした消費者へのリーチは、現状を乗り切り、消費者との感情的なつながりを生み出すために不可欠です。

アトリビューションを最優先に

オンラインとオフラインの販売実績を具体的なデジタルキャンペーンに結び付けていく力は、現在はもちろん、今後の持続的な成長においてさらに重要になってきます。ファネル全体に影響を及ぼし、その効果の正確な測定をサポートするパートナーの需要は、今後ますます高まっていくでしょう。

詳しくは、Criteoが公開しているホリデーシーズンのコンバージョンダッシュボードHoliday Product Finderをご覧ください。最新の消費者アンケートの結果は、こちらからダウンロードしてご覧いただけます。

1出典:Criteo、「COVID-19がマーケティングに及ぼした影響」に関するアンケート、米国、2020年10月、回答者数:100人。

2出典:Criteo、ホリデーシーズ調査、2020年8月、回答者数:米国1,547人、フランス1,229人、ドイツ1,134人、英国1,161人。

3https://www.commercehub.com/resources/commercehub-covid-19-consumer-retail-trends-survey-6-months-later/