Criteoのオーディエンス戦略を支えるテクノロジー

更新日 2022年09月15日

Criteoは今年、新たな戦略「オーディエンス・ファースト」を打ち出し、プロダクト単位ではなく、お客様のマーケティング目的に応じて、必要なオーディエンスを提供する体制の整備を加速しています。まず、ユーザーの維持にあたっては広告主様のファーストパーティ・データを活用し、新規獲得にあたってはCriteoのコマースデータを活用、さらにこの2つのデータを組み合わせることによって最適なオーディエンスデータを形成していきます。そして最終的には、たとえばユーザーのライフスタイルに基づくペルソナオーディエンス、位置情報に基づくロケーションオーディエンスといった具合に、これまで以上に多様なオーディエンスをお客様にお選びいただける体制の構築を目指しています。

今回のブログでは、2022年7月に行われたCriteo Agency AwardでCriteoの岸本庄史が行ったプレゼンテーションをもとに、このオーディエンス・ファースト戦略を支えるCriteo独自のテクノロジーBuyer Indexについて、解説します。

Buyer Indexとは?

Buyer Indexとは、「プロダクト」ではなく、広告主様のデータとメディアを横断したデータの類似度・相関性を表すスコアリングです。

実はBuyer Indexはすでに様々な機能で利用されている極めて重要な技術です。例えば、コンテクスチュアル・ターゲティングにも使われています。また、「コホート」と呼ばれるロジックにも搭載されているほか、アドレッサブルやONE TO ONEにも搭載されていく流れとなっています。つまり、いずれのオーディエンスに対しても、Buyer Indexが活用されていくということです。またBuyer Indexのカバー領域は広く、例えばレコメンドロジック、その商品を提示すべきかを判断する技術にも、Buyer Indexが使われています。さらに、いわゆるBiddingのロジック(ユーザーに対していくらのCPMをつけるべきかを決めるロジック)にも、Buyer Indexが適応されています。

Buyer Index開発の背景とその役割とは?

Buyer Indexが開発された背景にあるのは、プロダクトに対するニーズの変化です。かつてプロダクトに求められていたのは、パフォーマンスがすべてでした。そう、かつてのCriteoも「Performance is Everything」を掲げていたほどです。しかし、近年ではニーズが多様化してきており、「特定のユーザー層に対してのみ、パフォーマンスを出したい」「ユーザー識別子がなくてもターゲットしてパフォーマンスを出していきたい」といった多様なニーズに応えるプロダクトが求められるようになっています。このニーズに応えるために生まれた技術が、Buyer Indexです。

Buyer Indexが機能するためには、まず、データのインプットが大前提となります。では、どんなデータをインプットして学習させているのかというと、圧倒的なカバー率を誇るCriteoのコマースプラットフォームに蓄積された膨大な数のコマースデータです。コマースプラットフォームのデータには、広告主様のデータ(実購買行動データ)とメディア側のデータ(興味・関心データ)が含まれています。

広告主様のデータ、つまり実購買行動データには、タグに含まれるイベント、フィードに含まれるカテゴリー、ブランドといった情報が吸い上げられた行動データとしてインプットされています。パブリッシャーのデータには、広告を配信した後にインプレッションが出て、広告が表示され、ユーザーがクリックし、コンバージョンする・・・・・・といった、配信後の行動データが含まれています。さらに配信面のメディアのコンテンツがどのカテゴリーに分類されるものなのか、までもデータとして吸い上げています。そして、この広告主様のデータとパブリッシャーのデータを組み合わせて、それぞれの異なるデータ間の「類似性」と「相関性」を見つけ出すのが、Buyer Indexの役割です。

たとえば、あるユーザーの動きを追ってみましょう。このユーザーはまず広告主様のECサイトで靴を見た後、パブリッシャー側のサイトに移動して車の記事を読みます。さらにその後、別のECサイトに行って別ブランドの靴を見て、またメディアのサイトに移動し、今度はサッカーの記事を読みました。そして、その後またECサイトに移動して、今度はサッカーゲームを購入しました。こうした一連の動きを分析して、ユーザーがメディアで読んだ記事とECで見た靴が類似しているのか、もしくはサッカーの記事と購入したサッカーゲームは類似しているのか、関連性が高いのかどうかを、可視化するのがBuyer Indexなのです。

すこし技術的に説明をしますと、一連のユーザーの動きに対して、Criteoでは、いわゆるディープラーニングの1つである「ユーザーレプレゼンテーション」と呼ばれる学習モデルを組み、類似性・相関性を「距離」で、例えば距離が近いものは類似性・相関性が高いというように、表せるようにしています。その仕組みが、Buyer Indexです。下の図はBuyer Indexの仕組みをわかりやすくするために極端な例を示したものですが、靴と靴や、サッカーとサッカーのゲームは類似性・相関性が高いので近くに位置しており、一方、車と靴は類似性・相関性が低いので離れて位置しているのがお分かりいただけると思います。実際のBuyer Indexでは、この類似性・相関性を数値化して1つのインデックス(指標)として評価できるようにしています。

ここで、Buyer Indexの動きを見ていきましょう。例えばFeedの「ブランド」に「Nike」と入力すると、Buyer Indexが裏側で計算をし、Nikeと関連性が高いカテゴリーとしてアパレルとアクセサリーを、同じブランドとして「Jordan」を、商品としてAirMax97を指定します。さらにNikeに関心を持ちそうなユーザー群やアカウント群、ドメイン群、メディアカテゴリーまでを可視化できるので、ユーザー識別子がなくても、あらゆるデータポイントから類似性・相関性の高いユーザー群(コホート)やレコメンデーションを作成できるというわけです。

ちなみに、ここでは「ブランド」から入っていますが、他のどの軸からでも、たとえば「カテゴリー」や「ドメイン」という軸からでも、掘り下げて類似性・相関性の高いユーザー群を見つけることができます。Criteoのコンテクスチュアル・ターゲティングは、Buyer Indexのこの機能によって支えられています。

新プロダクトを共に創り育てるフェーズへ

最後に、Buyer Indexを活用した新プロダクト「Lookalike Audience(α)」をご紹介します。このプロダクトはクライアント様からCRMのデータをいただいて、それを類似拡張するもので、拡張ロジックにBuyer Indexが活用されています。ユーザーの実購買行動やメディア側の動きに合わせて指標を出し、その近くにいるユーザーを抽出できるようにするわけです。海外でおこなったテストでは、Lookalike Audienceのオンターゲット率の向上に顕著な成果が見られました。たとえば、男性のオンターゲット率向上を目標としていたクライアントは、類似オーディエンス(Similar Audience)利用時には13%だった男性の流入比率が、Lookalike Audience利用時には66%にまで向上しています。また、インクリメンタル流入をしっかり取ることができることも、証明されています。

こういった新プロダクトを活用して、ユーザー識別子に頼らない効果的な広告配信を実現するのに欠かせないのが、皆様のファーストパーティ・メディアネットワークへのご参加です。Criteoのテクノロジーを活用するには、データのインプットが必要不可欠です。ぜひ、ファーストパーティ・メディアネットワークに参加してデータをインプットしてください。また、新プロダクトのアルファテストに参加して、フィードバックをお寄せください。より良いデジタル広告の未来のために、ぜひCriteoとともに、新しいプロダクトを生み出し、育てていきましょう!