【ad:tech tokyo 2026 登壇レポート】
AIが変える購買行動と広告戦略――Criteo CEOが語る「選ばれるブランド」の条件とは?

2026年10月22日、東京・六本木で開催された「ad:tech tokyo 2026」に、Criteo CEO のマイケル・コマシンスキー(Michael Komasinski)が初登壇。「 AI 時代のディスカバリー:消費者の選び方はどう変わるのか」をテーマに、 AI による購買行動の変化と、マーケターに生まれる新たな機会について語りました。

 AI との対話を通じて、商品を知り、比較し、購入候補を絞り込む。こうした買い物のスタイルが広がるなか、ブランドや小売企業はどのように消費者との接点を築けばよいのでしょうか。講演のポイントを紹介します。

スピーチの登壇

 AI が広げる商品との出会い、短くなる購入までの道のり

これまで、オンラインで商品を探す際には、検索窓に商品名やキーワードを入力するのが一般的でした。一方、 AI との対話では、具体的な商品を思い浮かべる前に、困りごとや実現したいことを相談できます。コマシンスキーは、この変化が商品と出会う機会を広げると説明しました。消費者が自分の状況や希望を伝えることで、それまで想定していなかった商品も選択肢に入ってくるためです。同時に、一つの会話のなかで商品の発見から比較・検討まで進められるため、購入までの道のりは短くなります。

日本でも、こうした変化が見られます。講演で紹介した Criteo の国内調査(2026年9月、回答者312人)では、73%が、調べものを AI への質問から始める機会が過去1年間で増えたと回答。34%が、商品の比較・検討に生成AIを利用しています。

ただし、購入の判断を AI に任せているわけではありません。 AI のおすすめを見た後の行動として、主要 EC サイトの利用と実店舗への訪問がそれぞれ39%を占め、 AI 上での購入は2%にとどまりました。また、53%が最終判断は人が下すべきだと回答しています。 AI を選択の助けとして取り入れながら、自分で決めたいという意向もうかがえます。

スピーチの登壇

新規顧客との接点として期待される AI 広告

 AI は、ブランドと新たな顧客を結び付ける広告の場としても可能性を持っています。

講演で紹介した Criteo の初期の運用データでは、 ChatGPT 広告経由の流入の約80%が、そのブランドにとって新しい顧客でした。また、コンバージョン率は従来の検索の1.2~1.5倍という結果が見られています。

背景にあるのは、対話によって深まる購買意図の理解です。消費者は AI に相談する過程で希望や条件を整理し、提案を比較できます。購入したいものが明確になり、より具体的な目的を持ってブランドや小売企業のサイトを訪れると考えられます。一方で、生成 AI によってコンテンツが増え続けても、人が使える時間や注意力には限りがあります。情報があふれるなか、商品を見つけてもらうための広告の役割は大きくなるでしょう。その際に求められるのは、消費者の関心や会話の文脈に合い、次の行動を助ける提案です。

小売企業の強みは、信頼と「自分で選ぶ楽しさ」

 AI に商品を探してもらうようになっても、購入先として小売企業や EC モールが選ばれる理由は残ります。「いつもの支払い方法が使える」「きちんと届く」「困ったときに返品や相談ができる」といった安心感があるからです。

さらに講演では、「買い物そのものの楽しさ」にも触れました。商品を見比べてお気に入りを選んだり、思いがけない商品に出会ったりすることも、買い物の魅力です。便利になっても、すべてを AI に任せるのではなく、自分で選ぶ楽しさを大切にしたい。そうした消費者の気持ちに応えることも、小売企業の役割だと説明しました。

こうした安心感や買い物の楽しさを届けるうえで、重要性が増しているのが商品詳細ページです。講演では、 AI 経由の流入の約70%が商品詳細ページに直接到達するという傾向が紹介されました。

AI との対話で購入候補を絞り込み、個別の商品ページを訪れるようになっているのです。小売企業には、そのページで商品の魅力や購入に必要な情報を伝えるとともに、関連商品や組み合わせを提案する工夫が求められます。 AI がすすめた商品を入口に、「こちらもよさそう」「これと一緒に使いたい」と買い物の楽しさを広げる。「そこに、小売企業が培ってきた品ぞろえや提案力を生かす機会がある」と指摘しました。

スピーチの登壇

関連性の高い提案を支えるコマース・インテリジェンス

消費者の意図に合った提案を、どのように実現するのか。コマシンスキーは、その基盤として「コマース・インテリジェンス」の重要性を強調しました。価格や在庫、配送条件といった商品情報に、閲覧・購入履歴、同時購入される商品などのデータを組み合わせ、消費者の状況や意図に応じた提案につなげる仕組みです。

スピーチの登壇

講演では、エスプレッソマシンを探す場面を例に紹介。「コンパクトで耐久性があり、評判がよく、今すぐ買える」という条件に応えるには、サイズや素材などのカタログ情報に加え、在庫や販売動向、返品状況なども判断の手がかりになると説明しました。

また、商品データの整備については、テレビの商品情報を例に、サイズの誤りを修正し、欠けている属性を補う取り組みを紹介。さらに、人気度や価格帯、購入者の傾向などを加えることで、商品情報をマーケティングに役立つデータへと充実させられると述べました。

こうしたデータを提案に生かす技術として挙げたのが、大規模言語モデル(LLM)とレコメンドシステム(RecSys)の連携です。消費者の言葉や意図を理解する LLM と、実際の行動データなどに基づいて商品を選び、順位を付けるレコメンドシステム。それぞれの強みを組み合わせることが、より関連性の高い提案につながると説明しました。

マーケターが今、取り組むべきことは?

講演の終盤では、マーケターが今、取り組むべき課題にも言及しました。自社の商品やブランドを AI が正しく理解できるよう、情報を整備することの重要性を指摘。あわせて、 AI 上での自社の露出や自然流入を把握し、広告投資によってどれだけ成果が上積みされたかを測定する必要があると述べました。

また、 AI にどのようなデータを提供するのか、顧客との関係や購入体験のどの部分を自社で担うのかを明確にし、ガバナンスを整えることも重要だと説明しました。

最後にコマシンスキーは、「見つけてもらうことが検討のきっかけとなり、インテリジェンスに裏付けられた関連性が、選ばれる理由になる。そして、選ばれることが売上につながる」と述べ、講演を締めくくりました。

 AI が購買の新たな入口となるなか、消費者の意図を理解し、データに基づいて適切な提案へとつなげる。今回の講演は、その実現を支えるコマース・インテリジェンスの役割と、ブランドや小売企業が取り組むべき課題を示す機会となりました。

 AI 時代の消費者行動を捉え、商品との出会いをビジネスの成果につなげるために。広告施策や購買体験の改善をご検討の際は、ぜひ Criteo にご相談ください。コマース・インテリジェンスを活用し、貴社の課題に合ったアプローチをご提案します。