AI の活用が急速に広がるなか、Criteo では、購買体験がどのように変わりつつあるのかを捉えるため、主要 6 カ国・6,300名以上の消費者を対象にグローバル調査を実施しました。本記事では、その結果をもとに日本市場に焦点を当て、必要に応じてグローバルとの違いも交えながら、今注目したい変化を読み解きます。
AI は購買体験を大きく変えているように見えます。しかし、日本市場のデータから浮かび上がるのは、変化と変わらない本質の両方です。商品発見のチャネルが多様化しても、購買体験においてリテーラーやブランドが果たす役割は、引き続き大きいと考えられます。AI は急速に購買体験の様々な場面に浸透し始めていますが、最終的な意思決定を担うのは AI ではなく、あくまで「人」です。さらに、購入の決め手としては、「信頼性」や「透明性」「ブランド」といった、従来から重視されてきた要素がこれまで以上に重みを持っていることが見えてきました。
1. 商品の発見方法は多様化、購入は一元化

消費者が商品と出会う接点は、ますます多様化しています。AI アシスタント、リテーラーのサイト、SNS、コンテンツプラットフォーム、CTV、アプリなど、買い物の入口はもはや一つではありません。日本市場に着目すると、購入行動の起点として依然として強い存在感を示しているのが、Amazon や楽天に代表される信頼性の高いマーケットプレイスです。日本では購買起点の56%がこうしたマーケットプレイスから始まっており、検索エンジンがそれに続いています。これはグローバル水準を大きく上回る傾向でした。
この結果から見えてくるのは、日本の消費者が新しい手段に関心を持ちながらも、最終的には安心して比較・検討できる場を重視しているということです。AI は少しずつ購買体験に入り込んでいるものの、現時点では既存チャネルを置き換えるというより、新たな切り口の一つとして機能し始めている段階だと言えます。
2. 消費者が求めるのは、ありきたりではないパーソナライゼーション

AI の進化によって、一人ひとりに合った提案はしやすくなっています。しかし、日本の消費者が求めているのは、単に自分に合うものを見つけることだけではありません。実際に52%の消費者が、「検索内容と完全に一致する商品以外」の提案も求めていることが確認されました。AI による情報の同質化が進むにつれて、思いがけない発見や、視野を少し広げてくれるような提案への期待も高まっています。これからのパーソナライゼーションに必要なのは、正解を一つだけ示すことではなく、その人に合いそうな選択肢を自然に提案することです。AI の活用が身近になるほど、人の感性を活かしたキュレーションや、ブランドならではの世界観はかえって消費者に新鮮な価値として受け止められる場面も増えていきそうです。
3. プライバシーは重要、信頼はもっと重要

AI を活用したショッピングの拡大に伴い、プライバシーへの関心は引き続き高く見られます。本人確認や支払い情報の取り扱いに不安を感じる声は根強いものの、十分な利便性や価値が感じられれば、情報共有に前向きな消費者も少なくありません。消費者がより強く意識しているのは、プライバシーそのもの以上に、その情報や提案を信頼できるかどうかです。AI による誤情報、不正確なレコメンド、偽コンテンツや詐欺への懸念が残るなかで、安心して情報を受け取り、購入できる環境がこれまで以上に求められています。
そのため、AI 時代のブランドやリテーラーに求められるのは、便利さだけではありません。正確で信頼できる情報を届け、安心して購買できる体験を整えることが、これまで以上に重要になっていくと考えられます。消費者が簡単に新しいブランドと出会いやすい時代だからこそ、ブランドが長年築いてきた信頼性は数ある選択肢の中から選ばれる有力な理由の一つになっていくことが見込まれます。
4. マルチモーダルなショッピングが主流へ

商品を探す方法は、従来のキーワード検索だけではなくなっています。画像やスクリーンショット、会話形式の入力などを使いながら商品を探す「マルチモーダル」なショッピングが普及し始めています。
その一方で、日本市場ならではの特徴も見えてきました。グローバル平均と比べると音声検索の利用意向は18%と低く、商品を探す際に抵抗なく使う手段について聞いた設問でも、画像検索や音声検索など「上記のいずれも該当しない」と回答した人が比較的多く見られました。こうした結果からは、日本ではデジタル上の新しい探索手段が広がりつつありますが、店舗で実際に商品を見たり、思いがけず商品に出会ったりする体験も、引き続き支持されていることが分かります。
これから求められるのは、検索キーワードだけに最適化された情報設計ではありません。画像検索や対話型の入力でも見つけてもらいやすい商品情報と、オンラインとリアルの両方を行き来しやすい体験設計がより重要になっていきそうです。
5. エージェンティック AI が E コマース分野でも市場シェアを拡大
AI を活用したツールは、商品を見つける方法や場所を広げることで、オンライン購買を後押ししています。日本でも、画像検索や会話型検索といった新たな入力手段が商品検索のハードルを下げ、興味喚起から比較・検討までの道のりを短くしています。購買時の手間を減らし、迷いやカート離脱を抑えることで、ショッピング・ジャーニー全体をよりスムーズなものにしています。
さらに注目したいのが、AI 経由で流入するユーザーの特徴です。AI アシスタント経由でリテーラーにたどり着くユーザーは、事前にリサーチや絞り込みを済ませているケースが多く、最初から購買意欲が高い傾向にあります。米国のデータでは、AI 経由の流入は他チャネルと比べてコンバージョン率が1.5倍高いことも確認されました。
AI は単なる補助ツールではなく、新しい需要を生み出す新たな入口になりつつあります。そのため、ブランドやリテーラーにとっては、AI に見つけられやすい情報設計と、AI 経由で訪れたユーザーを受け止めやすい購買体験の両方がこれまで以上に重要になっていくと考えられます。
AI 時代に変わるもの、変わらないもの
AIによって、商品発見の機会が拡大しています。一方で、日本のデータからは、新しい手段が増えても、安心して比較し、納得して選べる環境の価値は変わらないことが見えてきました。今後、ブランドやリテーラーに求められるのは、あらゆるチャネルで伝えるメッセージに一貫性を持たせながら、AIにも伝わりやすい情報設計を整えることです。これからのコマースでは、信頼できる情報を着実に積み重ねていくことがブランドの差別化につながっていくと考えられます。
ここで紹介したのは「コマースと AI のトレンドレポート 2026」の主要トレンドです。より詳しい調査結果や、日本市場とグローバル比較から見えてきたインサイトについては、コマースと AI のトレンドレポート 2026のフルレポートをご覧ください。




