リユース市場が過去最高規模へ
「中古品を買うこと」に抵抗を感じる人は、もはや少数派かもしれません。フリマアプリやリユースショップが生活に浸透し、中古品の売買は特別な行為ではなくなりました。実際、国内のリユース市場は拡大を続けています。リユース経済新聞の調査によると、2024年の国内リユース市場規模は前年比4.5%増の3兆2,628億円となり、2009年以降15年連続で成長。過去最高を更新しました。市場規模は2030年には4兆円規模に達するとも予測されています。
背景にあるのは、物価高や節約志向だけではありません。消費者の「モノとの付き合い方」そのものが変わり始めているのです。
近年のリユース市場をけん引しているのは、ブランド品や時計だけではありません。同じくリユース経済新聞の調査によると、中古スマートフォン市場は2024年に初めて1,000億円を突破し、ファッション分野も初めて1兆円規模に達しました。かつて中古市場は「新品を買えない人の選択肢」と見られることもありましたが、現在では「賢く選ぶ消費」の一つとして定着しています。特に物価上昇が続くなか、消費者は購入に対してこれまで以上に慎重になっています。食品や日用品の値上げが続く一方で、自由に使えるお金は限られています。
その結果、「できるだけ失敗したくない」「価値のあるものにお金を使いたい」という意識が高まっています。
この意識の変化は、購買行動にも表れています。例えば新しいスマートフォンを購入するとき、多くの消費者は新品だけを比較しているわけではありません。中古品の価格や状態も調べ、「新品を買うべきか、中古で十分か」を検討します。ブランドバッグや腕時計、カメラ、ゲーム機なども同様です。
つまり、企業にとって「競合」は、もはや他社の新品商品だけではないということです。中古市場に流通している同じ商品や旧モデルも比較対象になっています。
消費者が比較する選択肢は増え続けており、企業はこれまで以上に「なぜ新品を選ぶ価値があるのか」を示す必要があります。
購入前から売却価値を意識する時代――「実質負担額」で考える新たなコスパ感覚
さらに興味深いのは、消費者が「買う瞬間」だけでなく、「手放す瞬間」まで見据えて商品を選ぶようになっていることです。かつて商品選びの基準は、「欲しいかどうか」「価格に見合う価値があるかどうか」が中心でした。しかし今は、それに加えて「将来いくらで売れるか」という視点が加わっています。
例えばスマートフォンを購入する際には、新機種の性能だけでなく、数年後の下取り価格や中古市場での相場を確認する人も少なくありません。ブランドバッグや高級時計、カメラ、アウトドア用品などでは、リセールバリューの高さそのものが購入を後押しするケースもあります。
つまり、消費者は商品の機能やデザインだけでなく、「資産としての価値」まで含めて評価しているのです。これは、「所有するための購入」から「価値を活用するための購入」への大きな転換と言えるでしょう。モノを買うことは、もはや単なる消費ではありません。一定期間利用した後に売却し、その資金を次の購入に充てる――。そんな循環型の消費スタイルが広がりつつあります。
こうした消費者心理を象徴するのが、「実質負担額」という考え方です。
例えば10万円の商品を購入し、数年後に5万円で売却できた場合、消費者が実際に負担した金額は5万円と考えることができます。購入価格そのものではなく、「使い終わるまでに最終的にいくらかかったか」で判断する発想です。
そのため近年の消費者は、
- 長く使い続けられるか
- 価値が下がりにくいか
- 売却しやすいか
- 次の買い替え資金につながるか
といった観点から商品を評価するようになっています。
言い換えれば、「コスパ」の意味そのものが変わりつつあるということです。かつてのコスパは、「できるだけ安く買うこと」を意味していました。しかし現在は、「購入後も価値を維持できること」「長期的に見て損をしないこと」まで含めて判断されるようになっています。
消費者が見ているのは、目の前の「値札」だけではありません。その商品の“出口価格”まで見据えながら、購入を決断しているのです。
新品と中古を横断する購買ジャーニー
こうした変化によって、消費者の購買ジャーニーはますます複雑になっています。
従来の購買ジャーニーは、「認知 → 比較 → 購入」という比較的シンプルな流れで整理することができました。そのため企業は、消費者が商品を比較検討するタイミングで適切な情報を届け、自社ブランドを想起・選択してもらうことに注力すればよかったのです。
しかし現在、そのプロセスは大きく変化しています。
例えば、ある消費者が新しいスマートフォンの購入を検討しているとします。まず SNS やニュースサイトで新製品の情報を知り、レビュー動画や口コミサイトで評価を確認します。その後、フリマアプリや中古販売サイトで旧モデルや中古品の価格を調べ、さらに「今使っている端末はいくらで売れるのか」まで確認するかもしれません。そして新品と中古品の価格差やリセールバリューを比較したうえで、ようやく購入を決断します。
ブランドバッグや腕時計、カメラ、ゲーム機なども同様です。消費者は新品と中古品を別々の市場として捉えているわけではなく、一つの選択肢として横断的に比較しています。
つまり現代の購買ジャーニーは、「認知 → 情報収集 → レビュー確認 → 中古価格検索 → 売却価格確認 → 新品・中古比較 → 購入」というように、多数の接点を行き来する複雑なプロセスへと変化しているのです。
企業にとって注目すべきなのは、消費者が購入の直前だけでなく、そのはるか前から複数のチャネルを横断して情報収集を行っている点でしょう。検索エンジン、 EC サイト、 SNS 、動画プラットフォーム、レビューサイト、フリマアプリなど、意思決定に影響を与える接点はかつてないほど増えています。
その結果、企業が想定している競合と、消費者が実際に比較している対象との間にもギャップが生まれています。企業は同カテゴリーの新品商品を競合と考えがちですが、消費者にとっては中古品や旧モデル、さらにはレンタルサービスまでもが比較対象になり得ます。だからこそ企業には、自社サイトや EC モールでの行動だけを見るのではなく、消費者が購買に至るまでにどのような情報に触れ、どのような選択肢を比較しているのかをより広い視点で理解することが求められています。購買ジャーニーが複雑化するなかで重要になるのは、単一の接点ではなく、複数のチャネルを横断した顧客理解です。消費者が新品と中古を行き来しながら意思決定を行う時代において、マーケティングにもまた、より立体的な視点が求められています。
コマースデータ活用で変わる顧客理解とマーケティング
消費者行動が複雑化するなかで、重要性を増しているのがデータ活用です。
消費者はどのタイミングで中古品を検討するのか。どの商品カテゴリーでリセールバリューを重視するのか。新品購入に至るまでにどのような情報に接触し、何が購入の決め手となるのか。
こうした行動を理解するには、断片的な顧客データだけでは十分ではありません。購買データや閲覧データを活用しながら、消費者の興味関心や行動変化を継続的に把握していくことが求められます。
特に、新品と中古を行き来しながら意思決定を行う現代の消費者を理解するうえで、コマースデータの価値はますます高まっています。例えば、「新品のスマートフォンを購入したい人」と「中古品も含めて比較検討している人」では、求める情報や重視するポイントが異なります。また、ブランドバッグや時計などでは、リセールバリューを重視する層と、価格そのものを重視する層とで、購買行動にも違いが見られます。こうした違いを把握し、一人ひとりの検討段階や興味関心に応じたコミュニケーションを行うことは、これからのマーケティングにおいてますます重要になるでしょう。実際、閲覧履歴や購買データをもとに、ユーザーごとに最適な商品を提案したり、比較検討中の消費者に適切なタイミングで情報を届けたりする取り組みも広がっています。
複雑な購買行動を理解するうえで、近年注目されているのがコマースデータの活用です。 Criteo では、世界規模で蓄積されたコマースデータと AI を活用し、複雑な購買ジャーニーの可視化を支援しています。消費者がどのような商品に関心を持ち、どのような比較検討を経て購入に至るのかを捉えることで、より精度の高い顧客理解とマーケティング施策の実現を可能にしています。リユース市場の拡大は、単なる中古品市場の成長を意味するものではありません。その背景には、「いくらで買うか」から「最終的にどれだけ価値を残せるか」へと変化する消費者意識があります。
買う前から売ることを考える――。
消費者が新品と中古を行き来しながら意思決定を行う時代、企業が向き合うべき競争環境も大きく変化しています。複雑化する購買ジャーニーを正しく理解し、一人ひとりに最適なコミュニケーションを届けられるかどうか。それがこれからのマーケティングの成否を左右する重要なポイントになりそうです。
Criteo の AI とコマースデータを活用したソリューションについて詳しく知りたい方はこちらからお問い合わせください。




